清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第47話)

第47話: 暮らしに根付いた「三つの教え」を忘れてはいけないと思います。

 人の暮らしのさまざまな場面で交わされる言葉に、「ありがとう」があります。さらに、その昔の日本の家庭では、「もったいない」「ばちがあたる」も慣用句でした。他者が何がしかの支援を自分に施してくれる。本来、人は自分自身の暮らしを自分の力で切り拓くことが求められています。そこに、誰からかわからないが自分を助けてくれる。めったにないことです。だからこそ「あることがない=有り難し」。まさに仏の教えに似ています。

 「もったいない」は「勿体・物体」がなくなる。つまりは価値がなくなってしまうことです。有り余ることの無駄。利用できるものを、そのまま捨ててしまうことの無駄。丁寧に使用すれば、まだまだ価値あるものとして存在して十分に機能を発揮するのに、幼い頃、モノをぞんざいに扱うことをひどく叱られたものです。倹約を旨として聖人になるを告げた孔子の教えにも思えます。

 「ばちがあたる」は「罰が当たる」で、悪い行いに対する戒めでもあります。善悪を知るために、人が人を懲らしめるのではなく、お天道様や先祖からのお仕置きがあると教えてきました。まさに、神の教えのようなものです。

 この3つの言葉に、ついぞ出会わなくなってしまいました。人とのちょっとした会話の中に響く言葉ではなくなってしまったようです。現代生活にあっては「死語」になってしまったのでしょうか。仕事の場面でも、家庭でも、自らのために他者が何かをしてくれる。まさに「ありがたい」ことです。何でも新しいものに飛びついてしまう。それだけ資源を無駄遣いしていることにもつながります。せっかくのものの価値がなくなるのですから、まさに「もったいない」こと。そして、社会における善悪を知ることなく歳を重ね、無謀な行動が横行する。「ばちがあたる」のは当然です。

 今、わが国には、暮らしに根付いた教えがないのでしょうか。浮ついた根無し草のようです。かく言う自分は、今日もこの3つの言葉を、どこかでつぶやいているのですが。(第48話に続きます)

清野先生の講義

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第24話)

第24話:アベノミクスとピケティ

 一般的なマクロ経済学で言うrは、長期金利の利回りを指す。デフレのときの日本経済は経済成長がマイナスになり、実質金利が高くなっていた。そうなると、r>gはより広がりやすくなる。そもそもピケティはデフレを想定していないが、デフレからインフレにもっていくことは格差の是正につながる。つまり、アベノミクスは名目金利を下げて成長率を上げようとしているため、r>gを縮小しようとしていることになる。そういう意味では、アベノミクスはrとgの差を縮小しようとしている政策という見方もできる。

 r>gの裏には、多くの人がもう少しr(資本収益率)の部分に参加するべきではないかという意味を秘めている。これだけ株が上がっているのに、日本で株式投資をしている世帯は1割程度しかない。これから日本がデフレを脱却していくと、現金の価値は下がっていくため、投資をしないと割を食ってしまうことになる。

 アベノミクスというのは、デフレ脱却が最大の目標になっている。ただし、デフレを脱却すれば日本経済の問題が全て解決するかというと、そうではない。日本の財政の維持可能性を担保することが最大の課題である。そういう意味では、アベノミクスは財政健全化の第一工程と考えられる。

 アベノミクスは日本経済の構造を変える政策になるため、単純に格差が広がるというような軽々しいものではない。実は、第二工程には社会保障の効率化が控えている。

 日本の場合、なぜ社会保障が維持できないのかというと、少子高齢化で世代間の支えができなくなってきているからである。そこを打破するには、世代内の支えをするしかない。高齢者世帯の格差も相当広がっているため、その部分の再分配が必要となっている。人生で成功した人に応分の負担をしてもらうことが、これからアベノミクスの重要な作業になる。そういった格差是正という意味では、ピケティの考えに通じるところがある。

 ピケティが提案するように、世界が協調して資本に課税することは机上の空論としては非常によい話であるが、現実的には不可能である。しかし、世界が協調することはできなくても、各国で格差是正のために再分配の対応を考えることは可能となる。

 日本では、間もなく納税者番号制度が導入される。その目的は、納税者に番号を付与して、その所得や資産を正確かつ効率的に把握し、課税の公平・公正を図ろうとするものだが、それだけではなく各種行政サービスを簡単に受けられるようになると言われている。これによって、所得だけでなく資産も把握できるようになれば、ピケティの提唱する累進資本税を導入することも容易になる。高齢者世帯の再分配を検討する際、ピケティの提案は大きなヒントになるかもしれない。(第25話に続きます)

第一生命経済研究所  主席エコノミスト 永濱 利廣
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主席エコノミスト 永濱 利廣

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永濱利廣著
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図解 ピケティの「21世紀の資本」
トマ・ピケティの『21世紀の資本』が世界的に注目を集めました。
しかし、原著(日本語版)は700ページを超え、完全に読みこなすのは難しいものとなっています。
本書では、難解な点を図にまとめたほか、ポイントを絞って原著に忠実に全体を解説しています。
あわせて、ピケティの著書や発言を参考にして、日本における格差問題やアベノミクスの評価について独自の解説を加えていま。

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第46話)

第46話:今は「力(ちから・りょく)」を問う時代なのでしょうか。

 個人的に昔から書店を回るのが好きでした。書店を回ると、その時々のマーケティングの注目分野を知ることができます。ブランド論が注目されれば、「ブランド」とつくタイトルの書籍が並ぶ。ITやWebとつくタイトルの書籍も多く並んだこともあります。そのような眼で傾向を見ていると、今の時代の風の音が聴こえてくるものです。

 今は何でしょうか。多く並ぶ書籍のタイトルには「力(ちから・りょく)」のつくものが見えます。主な「力」を並べてみましょう。

 仕事力/段取り力/時間活用力/気づく力/文脈力/直観力/観察力/着眼力/感知力/疑問力/仮説力/話力/会話力/質問力/常識力/観想力/構想力/独創力/思考力/発想力/先見力/分析力/問題解決力/整理力/記憶力/要約力/物語力/読書力/文章力/表現力/論理力/集中力/判断力/決断力/実行力/個人力/個力/人力/人望力/習慣力/創造力/説得力/人間力/市民力/中年力/老人力/地頭力

 これらは、どちらかと言えば「個人」の力を言ったもの。一方、企業にも「力」が求められるようです。

 企業生命力/企業変革力/事業展開力/変化対応力/経営力/現場力/改善力/積極力/戦闘力/マーケティング力/コミュニケーション力/ブランド力/サービス力/ヒット力/チーム力/上司力/統率力/金融力/時間力/会議力/交渉力/技術者力/製品開発力/原価力/情報力/商業力/適応力/自創力/自在力/試行力/起業力/創業力/競争力/提案力/広報力/そうじ力/集客力/顧客力/共鳴力/力学

 「力」はこぶしを握り締めたカタチです。今の時代には、何かを強く握り締める「活力」が欠けているのでしょうか。ふと、自分の持つ「力」は何かを考える時であります。(第47話に続きます)

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