清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第23話)

第23話:現代は「情報交換」に限らず「情動交感」の時代です。

 動画も含めて、ビジュアル情報のやり取りが出来るスマホやケイタイを使う風景が当たり前になりました。自分の気持ちを伝える際に、全てを文字で表現するのは小説家であっても至難のことでしょう。しかし、今の自分の顔を見せれば、ある程度のことは読み取ってもらえることがあるもの。「目は口ほどにものを言い」ではありませんが、その瞬間の自分の気分は顔に出るものです。であるならば、感情のやり取りには画像の方がリアリティがあります。「情報交換」の時代ではなく、「情動交感」の時代と見ることが出来ます。

 この時代に適応するマーケティングでは、今までのモードを改めて見直さなければならなくなります。そのために多くのキーワードやコンセプトが発信されています。Webマーケティングやeマーケティングといった言葉は当たり前になりました。しかしそこでの論点は、主に顧客への「接近」を中心としており、情動の「読み込み」に関するものではないように思えます。

 かつてITがもてはやされ、ITを知らざる者は時代のビジネスを展開する資格すらないように言われました。しかし、これもInformation(情報)のTechnology(技術)であって、情報加工の技術が中心に語られ、言葉を変えればInformation Toolと読むことが出来ます。

 今問われているのは、情報を細密に加工・分析する術ではないのです。その事実から読み取れる背景や、あるいは顧客が発信している言葉の裏にある情景までを、具体的に描き出す力です。他人の話を文章で表現する能力を持っていると、高く能力評価をされるケースもあります。「情報交換型」のスキルに関して多くのマーケティング・モデルが紹介され発信されてきました。これからは、「情動交感型」のマーケティング・モデルの研究開発が待たれます。(第24話に続きます)

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株式会社マップス 代表取締役 清野 裕司
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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第1話)

第1話:2015年は地方でも景気回復を実感

 地方経済の厳しさが報じられているが、その背景には、大胆な金融緩和に伴う円安でエネルギーコストが上がったこともある。エネルギーや燃料は地方の方がより生活必需であり、このダメージが大きかったからである。

 ただし、原油価格が下落していることが、今後相当プラスに効くことが期待される。足元の原油価格をみると、2014年夏から5割以上低下する一方で、円安が2割弱進んでいるため、円建てでは3割以上下落している。原油価格が下がれば天然ガスも下がるため、仮にこの状態が今年1年間続けば、10兆円単位の所得の海外流出を抑制することができる。

 加えて、今年度の補正予算で、政府の再分配政策として地方の低所得者層向けに商品券などの配布、住宅エコポイント、フラット35Sの優遇を増やすことなども検討されている。今後、地方でも景気回復が徐々に波及すると思われる。

 世界経済にとって原油価格が低下することのプラス効果は非常に大きい。特に日本の最大の輸出相手先であるアジア諸国ではネットで原油を輸入している国が多いため、原油価格の下落が相当プラスになる。原油価格の下落は日本の輸出にとっても相当な追い風となろう。

 一方、米国経済も順調に推移すると思われる。米国経済はリーマン・ショックで相当落ち込んだことから需給ギャップがあり、まだ水準的に上がる余地がある。このため利上げが実施されても当面は低金利が続き、米国経済にとって良い環境が続くと思われる。

 他方、中国は経済構造を考えると高度成長から安定成長への移行期であり、ゆるやかに減速する局面にある。不動産市場の調整が懸念材だが、政策のテコ入れが行われ始めていることからすれば、減速しながらも6%台後半の成長が期待できる。また、欧州でもデフレ懸念があるが、ようやく欧州中央銀行も量的緩和に舵を切らざるをえない状況になってきたため、2015年は若干持ち直すと思われる。

 外国人観光客の誘致も重要な成長戦略といえる。政府は2020年までに訪日外国人旅行者数2,000万人を目標に観光立国を目指し、観光ビザの発給要件を緩和している。外国人観光客も2012年は836万人、2013年は1,036万人、2014年は1,300万人に達した可能性が高い。

 外国人観光客の経済効果は大きく、1,000万人観光客が増えれば、現在の外国人観光客の消費額でみても1.5兆円以上消費が増えることになる。島国英国でも3,000万人以上の観光客があることからすれば、日本も3,000万人程度の外国人観光客が訪れてもおかしくない。地方でも観光資源を生かすことで、地域経済を活性化させることは可能なはずである。(第2話に続きます)

第一生命経済研究所  主席エコノミスト 永濱 利廣
第一生命経済研究所 
主席エコノミスト 永濱 利廣

濱 利廣 (ながはま としひろ)
第一生命経済研究所 主席エコノミスト

95年早稲田大学理工学部卒、05年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。
95年4月第一生命保険入社。98年4月より日本経済研究センター出向。 00年4月より第一生命経済研究所経済調査部副主任研究員、04年4月より同主任エコノミストを経て、08年4月より現職。

著書

「経済指標はこう読む」(平凡社新書)、「中学生でもわかる経済学」(KKベストセラーズ)、「スクリューフレーション・ショック」(朝日新聞出版)、「男性不況」(東洋経済新報社)、「図解90分でわかる!日本で一番やさしい『アベノミクス』超入門」(東洋経済新報社)、「図解90分でわかる!日本で一番やさしい『財政危機』超入門」(東洋経済新報社)、「エコノミストが教える経済指標の本当の使い方」(平凡社)、「知識ゼロからの経済指標」(幻冬舎)等。

経済財政諮問会議政策コメンテーター、総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事兼事務局長、一橋大学大学院商学研究科非常勤講師、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、㈱あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使。

清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く(第22話)

第22話:「話題」を広げる「話材」をもつこと。

 毎朝のビジネスモードへの入口が、PCを開いてメールを読むシーンが当たり前になってきました。電話が主流の時代では、相手の就業時間後は連絡が取れず、朝一番での連絡が当たり前でした。しかし今は、夜中の時間であっても、とりあえず連絡文だけは送っておこうとするマインドが働くようです。送信された時間を見ると、このような時間まで仕事をしていたのかと、ため息が出そうな時間のメールもあります。そして、朝から「どうでもe-mail」の山。削除するのも手間な「どうでもいい」モノばかりです。

 メールに眼をやった後は、少しの時間新聞に眼をやります。ネットでも情報は入ってきますが、「受信」と言うくらい「受身」の感が強いもの。能動的に情報を獲得するマインドで新聞を読みます。まさに「見る」のではなく「読む」行為です。幾つか気になるテーマにぶつかる。そこで得たちょっとした記事が、今日の「話材」です。コラム的な囲み記事に書かれていた、新しい街のこと、店のこと、人のこと。どのひとつをとってみても、他人と会話をする際の材料になります。

 仕事の上でのコミュニケーションには、「主題」に絡むさまざまな話が出てきます。何を語り合うかの基本的な題材は「話題」。その主題を語り合うだけでは、お互いの理解が進まないときがあります。コミュニケーションの場では、世の動き、人の動きなどを糧にして、話自体が円滑に進むときがあります。雑談に聞こえてくることが、ミーティングに参加をしているメンバーの相互理解を進めるものです。情報発信者の独りよがりの話では、同席するメンバーからの共感は期待できません。

 「話材」を集めるには、受信のモードだけでは不十分です。積極的に情報源に働きかけることが必要です。新たに市場に投入した商品も、多くの人の「話材」になることを考えることが必要です。そこにマーケティングを展開する意味がありそうだ、と私は考えています。(第23話に続きます)

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く(第21話)

第21話:「こなす」ことよりも「取り組むこと」が求められています。

 どのような分野にも当てはまることですが、仕事には「こなす」ものと「取り組む」ものがあります。慣れ親しんだ仕事は、どうしても日々目の前に登場してくることを、素早く手際よく「こなそう」とする意識が働きます。「今日中に目の前にある300枚の伝票を処理しなければ」、「午前中に書類のコピーを100セット準備しなければ」・・・・といった仕事です。そこには、効率を求める意識が働いています。今まで正しいといわれてきたやり方を壊すことなく坦々と「こなす」ことが良い仕事であると評価されます。しかし、「そのやり方が正しい」ということが前提です。

 最近は、それだけでは済まなくなってきています。こなす力が高まったからといって、それ程の評価は得られなくなった場面があります。昨日まで正しいと思っていたやり方が、今日からは違うことがあります。今日の経営環境にあっては、新たな方法やものの見方が求められているのです。従来型の発想だけでは、成果が期待できないことも多くなってきました。そこで必要になるのが「取り組む」姿勢です。

 マニュアルがあるわけではなく、先人が教えてくれるものでもなく、自分自身が生み出すことを考えていかなければなりません。「こなす」ことは過去の結果を導き出すことが多くなります。それよりも、難問・奇問に「取り組む」姿勢が求められるのです。

 どのような職業にあっても、「こなす」術を高めても、なかなか顧客満足には繋がらないようです。何よりも顧客の抱える課題に、一緒になって「取り組む」姿勢を忘れてはならない、と私は考えています。(第22話に続きます)

清野先生のマーケティングの著書です。
清野先生のマーケティングの著書です。

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く(第20話)

第20話:買物行動には「Shopping」と「Getting」があります。

 日本人の日常生活に、スーパーマーケットが根付いて既に40年強の時が流れました。業種別に分化された小売店が、消費者の購買態度に合わせた業態店へと変貌し、まさに様々な買い物に合わせた空間が登場してきています。スーパー(Super)を超越したハイパー(Hyper)や、相対的な低価格を売りものにするディスカウンター、ある分野(カテゴリー)での徹底的な商品の幅広さと奥行きを見せるカテゴリーキラー等々、百花繚乱の感があります。

 買い物行動には、目的的なものと衝動的なものがあります。全てを計画的に自らの生活に取り込むべく買い揃えるのではなく、何となく買ってしまい、後になって後悔の念に駆られた体験は誰もが持っているのではないでしょうか。あるひとつのものを購入するために、いくつもの店を見たり情報を集めて比較検討することもあるでしょう。検討の結果、目的物を獲得するために店に走ることもあります。前者的な行動が、店を見て回る“Shopping”、後者の行動は、獲物を得る“Getting”にあたります。

 最近の店を見ていると、多くGetting指向の狩猟場的な店に出会うことが多くなってしまいました。他者との差別的優位性を、圧倒的な商品数の陳列や低価格に求め、選択自由度を奪い去ったような店。「たくさんあるから買え!」「安いから買え!」の声が、そこからは聞こえてきてしまいます。

 購買行動は、目的物を獲る行為でしょうか。本来、自らが判断し選択する行為です。差別性とは、選択者である消費者に、選べる楽しさを見せる「魅せ(店)」なのです。ゆったりと見て回るShoppingを忘れたGetting行動では、購入したものへの愛着が生まれるでしょうか。私は疑問です。(第21話に続きます)

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