清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第106話)

第106話:未来を描き示す「ビジョン」は経営の原点です。

 80年代に注目を集めたビジネス書に「エクセレント・カンパニー」(トム・ピーターズ&ロバート・ウォーターマン)があります。成長しつづける超優良企業の条件を、国境を超えた調査・分析を踏まえて、そつのポイントを提示したものでした。そして90年代以降は「ビジョナリー・カンパニー」(ジム・コリンズ&ジェリー・I. ポラス)への注目です。企業永続の源泉は「基本理念」にあると示し、過去から将来に向けて変わることのない企業の基本哲学の重要性を説いたもので、企業のDNAや伝承すべき理念の重要性が、声高に言われるようになるきっかけにもなりました。

 今、日本企業に求められるのは、まさに今世紀ビジョンではないかと思います。将来の姿を具体的に描くものでなくとも、自分たちが進むべき方向を示したもの。その方向が明示されないままでは、自分自身が何をすべきか、どう振舞うべきかもはっきりしません。ちなみにわが国が進むべき道を示した国家的ビジョンは、今までに二つしかなかったと言われることがあります。一つは、明治時代の「富国強兵」。今ひとつは60年代の「所得倍増」です。

 ビジョンに求められる要件は幾つかあります。一つには「眼に見えやすいこと」。VisionはまさにVisual(視覚的)なものであり、将来像がはっきりした姿で示されているものです。二つには、実現可能であり且つ実現が待望されるものであること。絵空事のような言葉が浮ついたものでは、他者との共有化は難しくなります。そして三つにはコミュニケートしやすいことです。難解では、全員が何をすべきか、個々人が果たす役割が何かがわからなくなってしまいます。企業の方針は往々にして抽象度の高い言葉が並ぶ場合が多いものです。経営理念は自分たちの存在の状態を言葉で表明したものであり、日本企業の多くに「和」「誠」「努力」などの文字が並びます。今問われるのは、状態説明ではありません。未来への方向です。何をしたいのか?何を目指すのか?への解なのです。

 マーケティングは、市場構造の変化を自らの経営の中に取り込むことにあります。であるならば、将来方向を示唆したビジョンは、経営の意思表明であり、市場との対話の基点ともなる発言と捉えることが出来ると思います。_(第107話に続きます)

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 11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

当ブログの寄稿記事を元に加筆編集しました新書が出ましたので是非お読みください。

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「清野裕司のマーケティング考 風を聴く」

今、経営に新たな思考力が求められています。市場にはどのような風が吹いているのでしょうか。風の音に耳を澄ませていると、次代に向けた風の通り道から、マーケティング思考で未来への道標が浮かんでくるかもしれません。それはまた、自分の心に吹く風の音を聴くことにも繋がるのではないか考えました。

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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