エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第89話)

第89話:ようやく最悪期を脱しつつある日本経済

 日本経済の全体的な動向を見るという意味では、代表的な指標としてGDP、すなわち経済成長率等がある。最近の状況を見ると、日本経済は特に2015年からプラス成長になったりマイナス成長になったりと、一進一退を続けてきたが、2016年以降、ようやく3期連続でプラス成長になった。うるう年の特殊要因を加味すれば、若干だが3期連続で伸びが加速していることになる。

 内訳を見ると、個人消費が明確に回復とは言わないまでも、これまで続いてきた悪化が止まってきたと言える。その最大の要因は、耐久財である。

 この背景には、2009年度から2010年度にかけて、家電エコポイントやエコカー補助金等により家電や自動車販売の特需があったことがある。一方、内閣府の消費動向調査によれば、こうした耐久消費財の平均使用年数は7~9年程度である。このため、長年低迷していた車や家電等の耐久消費財の消費が買い替えサイクルの到来により増加している可能性がある。

 しかし、景気の先行きを規定するのは企業部門であるが、主に設備投資の数値が低迷していることがある。その最大の要因は、特に今年の年明け以降、急速に進んだ円高により、企業マインドが悪化し、設備投資に悪影響が及んでいる可能性がある。

 そのような中で、明るい材料としては、消費増税が先送りされた点である。この点については、少なくとも来年度の経済にはプラスに効いていくと考えられる。実際、日本経済研究センターのESPフォーキャスト調査を基に消費増税先送り前後の経済見通しに基づけば、消費増税が先送りされたことによって、GDPは4兆円程度恒常的に水準が高くなると計算される。

 もう一つは、事業規模28兆円の大型の景気対策である。実際に中身を見ると、国が実際に負担をする真水部分は7.5兆しかなく、今年度ベースでは5兆円強程度の真水の景気対策になるようである。それを踏まえると、今年度と来年度の経済成長率をそれぞれ+0.2ポイント程度、+0.3ポイント程度押し上げられる程度と予測される。中身を見ると、公共事業系のウエートが大きいため、建設関連には一部恩恵が行く可能性はあるが、表面上の数字ほど大きな効果は期待できないことには注意が必要だろう。

 一方、輸出の動向が大きく影響するのが、国内の生産活動であり、マクロ経済全体で見ると、増産に転じ始めている。鉱工業生産の生産計画まで入れると、在庫率が下がっていることもあり、秋口以降は明確な増産基調になっている。マクロ経済全体で生産調整が終了している状況を見ると、日本経済はようやく最悪期を脱しつつあると見ることが出来よう。(第90話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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