エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第85話)

第85話:より重要性が増すスペシャリスト志向

 前回、製造業は新興国から追随されるところは厳しいと指摘したが、新興国の需要という面でいけば、食品業界や医薬品業界等には期待する向きがある。中国において、「メードインジャパン」の食品や医薬品がもてはやされているように、新興国の生活水準が上がれば、やがては安全性が高く高品質の日本の食品、医薬品の需要が高まるだろう。ここでも給料アップの恩恵が得られるのは、専門性の高い職種の人と推察される。日本においても2040年までシニアの増加が続く推計となっており、健康関連業界における商品開発者は好待遇が得られる可能性もある。

 スペシャリストという意味では、国際弁護士や海外の会計基準に対応できる会計士などは、今後も活躍の場が広がり、給料が上がる可能性もある。コンサルティングは現在でも平均年収が高い業種だが、能力のある人なら高水準を維持できる可能性が高い。

 いずれの業界においても、とくに重要なスキルは、どの市場に進出すべきか、どの地域で何を売るべきか、どの組織と組むかなど、グローバルな課題解決ができる能力であろう。グローバルな市場で利益を生み出す仕事ができる人、ということである。現状では英語力が必須であることはいうまでもなく、ビジネススキルに特段長けてなくても、英語力に長けていることで一流企業に就職したり、一流企業を渡り歩いたりしている人材も少なくないといえる。

 筆者は、アベノミクスの構造改革で最も重要な分野は労働市場改革だと考えている。日本企業では、会社毎、勤続年数毎、役職毎に給料が決まる傾向が強いが、欧米のように職種で給料が決まる仕組みが理想的であり、欧米はだからこそ世界中から優秀な人材が集まりやすくなっていると言えよう。日本で働くホワイトカラーの人々は、自身が労働生産性に見合った正当な給与を受け取っているかを冷静に考えるべきであり、労働生産性見合いで収入が過剰となっている場合は、将来的に収入に下落圧力がかかる可能性を認識することも必要だろう。そして、転職を考える場合や、御子息が就職を控えている場合などでは、「就社」ではなく「就職」が重要であることを認識すべきだろう。会社に依存するのではなく、会社を利用していかに専門性の高い職業スキルを身につけるかが重要である。

 例えば、AIにとって代わられる職種は給料が下がる可能性が高いが、AIを開発する側の職種は給料が上がる可能性が高い。これからの就職にはこうした戦略的なキャリアプランが求められることになろう。(第86話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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