エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第76話)

第76話:期待される内需拡大刺激策

 安倍首相が伊勢志摩サミットで「リーマン級の危機」と発言したことが批判されたが、その後、ブレグジットが現実のものとなり、世界経済の不透明感が高まっている。こうした中、日経平均株価の変動率を見ると、最大の下落を記録したのが2008年9~11月にかけた「リーマンショック」となっている。そして次が1990年10~11月にかけた「バブル崩壊」であり、実に今年年明けの下落率が第三位となる。株価に連動する形でチャイナショックが起きた昨年夏以降、街角景気指数も11カ月連続で好不調の分岐点である50を下回っている。

 さらに8月に公表される今年4~6月期の経済成長率も熊本地震の影響に加えて、うるう年効果の反動で年率▲1.2%のゲタを履くため、高成長は期待できない。

 特に深刻なのは、2014年4月の消費増税以降、家計の収入が増えているにもかかわらず個人消費が低迷を続けているということである。背景には来年4月に再増税を控えていたことで消費マインドが委縮していたことが予想され、そうした意味では消費増税の2年半先送りは賢明な判断といえよう。

 こうした中、今夏に打ち出される大型補正の規模が注目される。目安は日本経済の需要不足の規模であり、内閣府が試算するGDPギャップにうるう年要因を調整すれば、昨年末時点では7.5兆円程度になると算出できる。これに熊本地震の被害総額が最大4.6兆円と試算されていることからすれば、すでに打ち出されている8000億円弱の補正予算を除いても、3兆~4兆円の復興予算が必要になる。これらを合わせれば、最低でも真水と財政投融資を合わせて10兆円規模の補正予算が必要になってくるだろう。これに日銀の追加緩和が加われば、消費増税先送りと相まって、今年後半の景気は持ち直しが期待されよう。

 具体的な補正予算のメニューとしては、「最低賃金の引き上げ」「待機児童減の施策」「子育て支援のクーポン券」「外国人観光客の増加促進」そして、熊本震災復興を中心とした「公共事業」という施策が予想される。建設現場での人手不足が懸念されているが、国交省の統計によれば建設関係の人手不足は緩和している。このため、人手不足の緩和が公共事業の後押しになろう。

 米国にとっても、日本には内需拡大してもらいたいはずである。実際、積極的な財政支援を行った国の方が歴史的には上手くいっているという事例も見られる。事実、リーマンショック後のアメリカやイギリスの金融・財政政策とアベノミクスは似ている。財政健全化の状況を見るには、国の純債務のGDP比を見るのが正しい見方であるが、アメリカやイギリスはリーマンショック以降に先進国でもいち早くこの上昇を止めることに成功している。(第77話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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