エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第75話)

第75話:猛暑後はマイナス成長のジンクス

 過去の経験によれば、猛暑で業績が左右される代表的な業界としてはエアコン関連や飲料関連がある。また、目薬や日焼け止め関連のほか、旅行や水不足関連も過去の猛暑では業績が大きく左右された。そのほか、冷菓関連や日傘・虫除け関連といった業界も猛暑の年には業績が好調になりがちとなる。更に、飲料の販売比率の高いコンビニや猛暑による消費拡大効果で広告代理店の受注も増加しやすい。缶・ペットボトルやそれらに貼るラベルを製造するメーカーや原材料となるアルミニウム圧延メーカー、それを包装するダンボールメーカーなどへの影響も目立つ。更には、ファミレスなどの外食、消費拡大効果で荷動きが活発になる運輸、猛暑で外出しにくくなることにより販売が増える宅配関連なども猛暑で業績が上がったことがある。一方、食料品関連やガス関連、テーマパーク関連、衣類関連などの業績には、過去に猛暑がマイナスに作用した経験が観測される。

 そこで、国民経済計算のデータを用いて気象要因も含んだ7-9月期の家計消費関数を推計すると、7-9月期の気温や日照時間が同時期の実質家計消費に統計的に有意な影響を及ぼす関係が認められる。そして、過去の関係からすれば、7-9月期の日照時間が+10%増加すると、同時期の家計消費支出が+0.45%程度押し上げられることになる。これを気温に換算すれば、7-9月期の平均気温が+1℃上昇すると、同時期の家計消費支出を約+5,100億円(+0.8%)押し上げることになる。

 従って、この関係を用いて今年7-9月期の日照時間が94年および2010年と同程度となった場合の影響を試算すれば、日照時間が前年比でそれぞれ++33.5%、+25.0%増加することにより、今年7-9月期の家計消費はそれぞれ前年に比べて+9,400億円(+1.5%)、+7,000億円(+1.1%)程度押し上げられることになる。

 ただし、家計消費が増加すれば、同時に輸入の増加等ももたらす。このため、こうした影響も考慮し、最終的に猛暑が実質GDPに及ぼす影響を試算すれば、94年並となった場合は+7,200億円(+0.6%)、2010年並となった場合は+5300億円(+0.4%)ほど実質GDPを押し上げることになる。このように、猛暑の影響は経済全体で見ても無視できないものといえる。

 しかし、10~12 月期は反動が予想されることには注意が必要だ。過去の例では、記録的猛暑となった94、10 年とも7~9月期は大幅プラス成長を記録した後、翌10~12 月期は個人消費主導でマイナス成長に転じているという事実がある。

 つまり、猛暑特需は一時的に個人消費を実力以上に押し上げるが、むしろその後の反動減を大きくする姿が窺える。猛暑効果により売上を伸ばす財・サービスは暑さを凌ぐ為に止む無く出費するものが多い。従って、今年も猛暑効果で夏に過剰な出費がされれば、秋口以降は家計が節約モードに入ることが予想されるため、秋以降は注意が必要だろう。(第76話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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