エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第71話)

第71話:予想される個人消費の拡大策

 参院選後に編成予定の第二次補正予算のメニューについては、消費税率引き上げ後の個人消費の低迷がリーマンショック後以上に長引く中、3月24日に開催された平成28年第4回経済財政諮問会議において、民間議員がGDP600兆円の実現に向けて「消費の持続的拡大」と題して提案された内容も参考になろう。

 この提言では、消費の持続的拡大として、包括的な取り組みを進めるべきとしている。柱が「輝く希望の実現」であり、働きたい、働く時間を増やしたいなど、希望通り働くことができない状況にある約920万人の要望に応えることを目指す。そして、これが実現されれば、10-14兆円程度の所得増と消費拡大が実現できるとしている。

 具体的には、アベノミクスの成果を活用して就業促進や人材投資、多様な働き方改革、待遇改善を進めるメニューが並ぶ。中でも注目のメニューは、負担減のため働く時間を抑える「年収130万円の壁」の克服や長時間労働の抑制と有給休暇取得の促進が挙げられよう。また、健康増進・予防サービス分野や子育て・介護サービス、まちづくり、インバウンドを含む国内外旅行、TPP市場、シルバー市場など有望分野のイノベーションや規制改革を通じて、国民が求める新たな財・サービスを生み出すとしている。ここでの注目メニューは、プレミアム付き商品券や旅行券発行、地方乗り入れの格安航空会社やクルーズ船の発着拡大などが挙げられる。

 ただ、消費喚起策のメニューだけで事業規模を6兆円以上にするのは困難であろう。従って、実際に打ち出される補正予算については、消費喚起策に加えて公共事業の支出増が加わる可能性が高い。具体的には、訪日客が乗り入れる空港やクルーズ船が停泊できる港湾等の整備に加えて、リニア新幹線の延伸時期の前倒し、熊本、大分県の地震被害の復旧・復興や老朽化インフラの大規模な改修工事等のメニューが加わることが予想される。

 なお、公共事業に関しては建設業界の人手不足の深刻化により工事が予定通り進まないと懸念する向きもある。しかし、国土交通省の建設労働需給調査によれば、建設技能労働者の過不足率は2014年度以降急速に不足率が縮小している。従って、これまでのアベノミクス下における補正予算に比べれば、GDPの押し上げ効果は高まる可能性がある。政府は当面の景気を下支えするために16年度予算を前倒しで執行するとしており、通常であれば16年度後半にはその反動減が懸念されるが、この反動減の部分を今年度補正予算における景気対策により相殺することが期待されよう。

 いずれにしても、事業規模は今後の金融市場の動向に大きく左右されることが想定される。(第72話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

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