エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第65話)

第65話:マイナス金利と資産運用

 今回のマイナス金利導入は、日本で初めて金利がマイナスになったことで注目を集めたが、EUの中央銀行であるECBや、スイス、デンマーク、スウェーデンでは、すでにマイナス金利が導入されている。

 日本で、マイナス金利が適用されるのは、金融機関が日銀に保有している当座預金約二百六十兆円のうち10~30兆円である。残りのうち210兆円はこれまでと同じように0.1%の金利がつき、40兆円は金利ゼロである。マイナス金利で経営を圧迫された銀行がATMの手数料を上げるのではないかと心配する向きもあるが、マイナス金利が適用されるのは一部なため、今のところそれは考えにくい。

 ちなみに、マイナス金利が適用される10~30兆円は、日本のGDPの2~6%である。一方、ヨーロッパはユーロ圏のGDPの約8%にあたる額にマイナス金利を適用している。しかも日本の金利は▲0.1%であるのに対して、ユーロ圏は▲0.4%。国により状況が異なるため一概には言えないが、銀行の経営に大きな影響を与えることは考えにくい。

 そもそも銀行は、日銀が国債を高く買い取ってくれるため、今回のマイナス金利導入でもトータルで必ずしもマイナスとは限らない。マイナス金利導入後は銀行株が下がっているが、それは今回のマイナス金利導入が唐突すぎて、その意味を市場が解釈しきれていない可能性がある。ヨーロッパでは、マイナス金利導入の約一年前からその可能性が示唆されていたため、市場の混乱は限定的だった。

 ただ、預金金利は下がって利息がつきにくくなる。しかし、もともと預金金利は0.0数%で、ATM手数料を加味すれば実質マイナスになってしまう程度の水準だった。それが0.00数%になったところで、実質的に影響は限定的だろう。

 一方、ローンの金利も下がる。これは現役世代ほど有利である。シニア世代は住宅ローンを支払い終わっている世帯も多いが、現役世代は住宅や教育、自動車など何かと借金をする機会が多く、その分恩恵も大きいと考えられる。

 アベノミクスはデフレ脱却を目指した経済政策であり、今回のマイナス金利導入もその一環である。資金を積極的に動かす人や経済的に成果を上げる人がより恩恵を受けられ、ひいてはそれが日本経済にも良い影響を及ぼす仕組みとも言える。このため、少しでも資産があるのであれば、動かしたほうが個人としても企業としても良い循環を生む可能性が高まる。

 なお筆者は、少なくとも黒田総裁の任期が終わる2018年3月まではマイナス金利が継続されると考えている。つまり、当面は投資に有利な環境とも言えなくもない。このため、インフレヘッジの観点からも、株や外債、不動産などに投資をすることは意味がある。

 日本はまだデフレの渦中にあるため、今後、さらなる量的質的金融緩和やマイナス金利が進んでいく可能性がある。来るべきインフレに備え、この機会に資産運用を考えるべきだろう。(第66話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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首席エコノミスト:永濱利廣(監修)

mainasu2016年1月29日に日銀の金融政策決定会合で決定され、2月16日から実施された「マイナス金利」。

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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