エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第63話)

第63話:マイナス金利導入の意味

日本経済をデフレ経済から立ち直らせ、再び成長基調に乗せるために日銀が打ち出した新たなツールがマイナス金利である。これは日本初の試みだが、欧州では既に実施されている。

これまでプラスが当たり前と考えられていた金利をマイナスにする政策であるため、ある程度の副作用は出てくる。ただそれ以上に、アベノミクスの景気拡大を推進する効果が大きいと考え日銀が導入した。具体的には、マイナス金利によって円高・株安を阻止し、消費拡大を狙っている。

しかし実際には、導入発表直後に阻止するはずだった円高・株安が起こる。そのためマイナス金利は失敗だったという声も聞かれるが、それは誤りである。むしろマイナス金利があったから、今のレベルで留まっていると筆者は考えている。

昨年来、中国経済の失速予想や欧州銀行の信用不安、原油価格の急落といった国際的な経済混乱要因により将来の不透明感が拡大した。円高・株安の原因はそこにある。もし、景気回復に向けて日銀はマイナス金利を導入していなければ、マーケットはさらに酷いことになっていた可能性が高い。

これまでも日銀は、断固として異次元の量的緩和・質的緩和を実施してきた。その上で、インフレ率2%という目標達成をより確実にするために採用した第3の手法がマイナス金利である。これまでの量と質の緩和に続いて、金利を活用することになったわけだが、それが「マイナス」という古典的な経済常識にとらわれない手法だったのも大きなインパクト。正に、日銀はどんな手を使ってでもインフレ目標を達成するという決意をもっていることが世界中に知れわったった。

マイナス金利で直接的に損をするのは日銀だけである。マイナス金利が適用される預金を持っている民間銀行には支払分が発生する。しかし一方で、銀行は国債を日銀に販売して利益を得ており、金利が低下すればその販売価格は上昇する。それらを合算すれば、結果的には増益が期待できる。融資やローンの利息が少なくなる民間や家計にもメリットが大きい。

トータルでみれば、マイナス金利で一番利益を得るのは、莫大な国債を発行している国である。長期金利の変化で国債の利払いは大きく変わるためである。想定より1%程度金利が低下すれば、必要な利払いは1兆円も減る。さらにマイナス金利で実体経済が回復すれば財政赤字縮小にもつながる。こうして、最終的にはマイナス金利から最大のメリットを受けるのは日本政府ということになる。

結局、マイナス金利が引き起こすのは、ポートフォリオのリバランスである。銀行が抱え込んでいる資金が民間への投融資に回り、リタイア世代から現役世代の資金移転が促進されることによって、世の中にお金が行き渡れば、日本経済は確実な成長基調に移っていく。(第64話に続きます)
永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所

経済調査部 首席エコノミスト

永濱利廣

 

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第一生命経済研究所

首席エコノミスト:永濱利廣(監修)

mainasu2016年1月29日に日銀の金融政策決定会合で決定され、2月16日から実施された「マイナス金利」。

プラスであることが当たり前の金利がマイナスになるとは、いったいどういうことなのか?

日本の経済を再生する原動力となるのか?

そして、私たちの生活にどのように関係するのか?

誰もが疑問に思うことを、Q&A方式を用いて簡潔に解説していきます。

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投稿者:

ジパング・ジャパン

「にっぽん」を世界へ、情報発信していく会社です。

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