エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第62話)

第62話:社会保障費の伸びを抑制するための具体案

 政府は、経済財政諮問会議で、2020年度までの財政健全化に向けて、社会保障費の伸びを抑制していくための具体案を打ち出している。

 まず一つ目は、価格の比較的安い後発医薬品、ジェネリックの利用の拡大である。添加物などを除いて先発薬とほぼ同じ有効成分だが、日本でのジェネリックのシェアは現在約55%となり、欧米に比べるとかなり低い水準となっている。これを2018年度から2020年度の早い時期までに、欧米並みの80%以上に上げるという目標を掲げるとしている。これが実現すれば、医療費は年間に1.3兆円削減され、患者負担も軽減される。

 また、医療機関の外来の窓口で支払う負担を増やすことが検討されている。現在は、かかった医療費のうちの1割から3割を窓口で支払うことになっているが、これに上乗せして定額の負担を求めるというものである。患者負担を増やして、医療機関を頻繁に受診する患者を減らそうという狙いである。

 加えて、公的な医療保険の対象となる薬の範囲を狭めようという案も出ている。具体的には、市販されているものと同じ有効成分の医薬品、例えば、湿布や目薬、うがい薬、漢方薬などを保険の適用から外し、医療機関で処方された場合は全額自己負担、あるいは、負担割合を例えば1割から2割へと引き上げようというものである。市販薬を購入する人を増やして病院に行く人が減れば医療費を抑制できるというのが政府の狙いである。

 しかし、負担を増やすことや保険で受けられる薬の範囲を多少狭めたりすることだけで医療費を抑制しても、やはり限界がある。そのため、次なる手として導入が考えられるのが、世代内の支え合いの強化である。今の日本の社会保障制度は、現役世代がリタイアした世代を支える構造、つまりは世代間の支え合いが基本になっている。しかし、少子高齢化が進む日本では、これ以上現役世代に負担を求めることはできない。

 そこで、世代間の負担のバランスをとるために、高齢者の窓口負担の引き上げの検討も避けられないだろう。具体的には、75歳以上の人たちの窓口負担を1割から2割に上げようという案である。また、経済的に余裕のある高齢者には応分の負担をしてもらうような形に、システムが変更されると予想される。具体的には、経済力に応じた負担に変えていくために、預貯金などの資産も含めて、負担割合を決めようという案である。そのためには、厳重な情報管理のもとでのマイナンバーの活用が前提となるだろう。

 今年から納税者番号制度が導入され、国民の所得を国がある程度把握できる体制が整うが、これなどは、先に説明した世代内の支え合いを進めるための準備に他ならない。将来的には国は個人の銀行口座も把握し、資産まで管理するようになると、既にいくつかのメディアで報道されているが、おそらくその方向で進むだろう。(第63話に続きます)

 

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所

経済調査部 首席エコノミスト

永濱利廣

 

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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