エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第61話)

第61話:社会保障改革に伴うリスク

 日本は世界最大の債務国で、すでに国債発行残高は1000兆円の大台を超え、早期の財政健全化が求められている。

 このまま、借金のGDPに対する比率が上がり続けてしまうと、いずれは信任を失い、国債が暴落。最悪の場合、国家として財政破綻を迎えるといわれている。

 この増え続ける国の借金に歯止めをかけるため、民主党政権下の2010年6月「財政運営戦略」が閣議決定され、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を2015年度までに2010年度の水準から半減し、更に2020年度までには黒字化させることを明記した財政健全化目標が定められた。

 この目標は、政権が自民公明の連立政権に戻ってからも撤回されることなく、堅持されており、実際、政府もこの目標の達成に向けて様々な策を講じている。

 アベノミクスの効果もあり、2015年度の赤字半減はなんとか達成のめどがついたため、次に政府は2020年のプライマリーバランスの黒字化を達成するために、策を講じてくることが考えられる。

 この2020年プライマリーバランス黒字化を達成するために採られる方策が、景気の腰を折りかねないリスクとなる可能性がある。

 1990年以降、国債残高が増加した要因を、経年でグラフにすると、ここ数年の国債残高の増加要因は、その大半が社会保障費と不足していた税収の補填分で占められている。

 但し、税収の補填分に関しては、2014年度は6.1兆円と、ピークに比べて大幅に縮小された。これはアベノミクスにより景気が良くなり、税収が増えたためである。今後、更に景気が良くなれば、税収の補填分はゼロになることもありえる。

 一方の社会保障費は、いくら景気が良くなっても減ることはないため、何らかの方策を講じて、効率化していかなくてはならない。

 社会保障費の構成要因は大きく年金、医療、介護である。これらが、今後どのように増えていくのか政府が予想値を発表している。

 これによれば2025年の社会保障費は、2012年に比べて全体で39兆円も増えると予想されているが、実にその約半分の19兆円が医療費の増加分で占めている。

 つまり、医療費にメスを入れることが、財政健全化にとって必須条件となっている。医療費削減のために、一番てっとり早いのは医療費の自己負担比率を引き上げ、診療報酬を下げることだが、診療報酬の抑制については医療の高度化等の要因も加味しなければならないため、実現するには相当な困難を伴うだろう。(第62話に続きます)

 

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所

経済調査部 首席エコノミスト

永濱利廣

 

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