エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第56話)

第56話:TPPをうまく活用するために抑えておくべきこと

 TPPをうまく活用するために抑えておくべきことは、主に10点に数えられる中小企業へのTPPのメリットであり、TPPは製造業のみならずサービス業も含めた多様な中小企業の発展の契機となろう。

 一点目のメリットは関税の撤廃であり、わが国が輸出する工業製品の99.9%の関税が撤廃される。自動車部品を例にとれば、現行税率が主に2.5%である米国への輸出については品目数で87.4%、輸出額で81.3%の即時撤廃で合意しており、これは米韓FTAを上回る水準である。また、現行税率が主に6.0%であるカナダへの輸出についても品目数で95.4%、貿易額で87.5%の即時撤廃で合意しており、これも加韓FTAを上回る水準である。従って、中小企業自らの輸出拡大のみならず、大企業の輸出拡大を通じても中小企業の事業に大きなメリットとなろう。なおTPPでは、陶磁器でも対米輸出額の75%を即時撤廃、タオルでも米国の現行税率9.1%を5年目に撤廃、カナダの現行税率17%を即時撤廃など地方の中小企業に関連する品目についても関税撤廃で合意している。

 二点目は、商品がどの国でつくられたかを特定する原産地規則のルールの中で「完全累積制度」が導入されることである。これにより、生産工程が複数国に跨っても、TPP参加12か国内で生産された製品は関税優遇を受けられることになる。従って、部品の供給網が広がれば、優れた加工技術を持つ日本の中行企業の競争力は一層高まることになろう。

 三点目は、投資サービスの自由化である。具体的には、コンビニなどの小売業のみならず、劇場・ライブハウス等のクールジャパン関連、旅行代理点などの観光関連などの外資規制が緩和される。また、進出企業に対する技術移転要求やロイヤリティ規制などが禁止となるため、サービス業も含めた幅広い分野で海外展開にメリットが生じる。中でも、食品や日本各地の特産品等を生産する中小企業がコンビニと提携することで海外展開が容易になろう。更に、ISDSと呼ばれる国と投資家の紛争解決手続きも導入された。これにより、中小企業が相手国政府から不当な扱いを受けて被害を被った際に、直接国際仲裁へ訴えることが可能になる。

 四点目は、迅速通関など通関手続きの円滑化である。これは、貨物の到着から48時間以内(急送貨物は6時間)に引き取りを許可する原則である。これにより、海外の納入先への納入遅延リスクが軽減し、オンライン通販などにもメリットが期待できる。

 五点目は、模倣品や海賊版対策の強化である。これは、模倣品を水際で職権を差し止める権限を各国当局へ付与することや、商標権を侵害しているラベルやパッケージの使用や映画盗撮への刑事罰義務化等が含まれている。このため、模倣品による被害を受けている中小企業の製品の模倣品の防止や技術の保護や、デジタルコンテンツの海賊防止にメリットが生じる。(第57話に続きます)

 

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所

経済調査部 主席エコノミスト

永濱利廣

 

エコノミスト永濱氏の新刊も是非お読みください。

http://www.seishun.co.jp/book/16673/

(ご購入は上のURLからもできます)

 

 

nagahama20161011企画提案、事後報告、業界予測──。自分のやりたい仕事を通すには、わかりやすさと説得力を兼ね備えたレポートをつくる力が欠かせません。でも、多くは「表やグラフを多用しすぎ」「論旨が脱線」「とにかく長い……」など、“残念なレポート”になってしまっています。長年、業界のプロや一般読者を対象に“読ませるレポート”を作成してきたエコノミストが、どんなレポートも見違える大原則を公開します。

投稿者:

ジパング・ジャパン

「にっぽん」を世界へ、情報発信していく会社です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください