エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第51話)

第51話:日本経済にとって、ここ2~3年が最重要

 失われた20年の影響もあって、企業経営者にデフレマインドがしみつき、なかなか楽観的にはなりにくい状況にある。売上が増えて利益が増える場合と売上はそれほど増えないものの、原材料などのコストが下がって利益が増える場合では、企業経営者の受け止め方が異なり、原材料コストの低下による利益増では前向きに考えにくい状況になっている。

 政府がデフレ脱却のために必要な指標として、消費者物価の上昇率、GDPデフレーターの上昇率、単位労働コストの伸び率、GDPギャップの4つを定義しているが、GDPギャップがまだマイナスであり、デフレではないもののデフレ脱却といえる状況ではない。

 2016年の経済成長が民間エコノミストの予測並みであれば、2016年度半にはGDPギャップが解消される可能性がある。デフレ脱却を確かなものにするという観点からみると2017年4月の消費増税はタイミングが悪い。ベストシナリオは消費税率を10%に引き上げても、経済の勢いが弱まらないように2016年中に景気を良くすることだろう。2016年夏の参議院選挙、2017年4月の消費税率の引上げなどを考えると、2016年夏までに景気をどの程度良くできるかが重要となる。

 現在の日本経済が一番避けなければならないことは財政破綻である。今、国の借金が増えながらも国債の信任が落ちない理由は、日銀が買っていることもあるが、間接的には政府の債務残高を家計の純金融資産が上回っていることもある。ただ、安倍政権以前はその幅が縮小傾向で、逆転してしまう可能性があった。それがアベノミクスによって、格差拡大などの問題はあるものの、経済全体を考えれば、株価が上昇し家計の金融資産も1,400兆円から1,700兆円に増え、政府債務は増えているものの家計の純金融資産との差は拡大し、財政危機は遠のいている。財政のプライマリーバランスも黒字化はしていないものの改善し、問題はあるもののマクロ経済政策という意味では成功している。直接的な経済政策で大切なのは、雇用環境をいかに改善させるかで、雇用も100万人以上増加し、完全雇用までには至っていないものの、失業率も低下している。あとは影の部分をいかに手当するかという意味でも、再分配を行う必要がある。

 2020年代半ば以降を考えると、団塊世代が後期高齢者となり、社会保障費のさらなる増加、生産年齢人口の減少幅が拡大することなど、様々な課題がある。社会保障費の削減が必要だが、急激な削減には問題がある。2014年はシニア層の消費が好調だったが、2015年はシニア層の消費が弱く、個人消費の落ち込みの一つの要因となっている。ある程度の金融資産を持つシニア層には社会保障も応分の負担を求めることや2021年をめどに預金口座へのマイナンバー適用の義務付けといった報道があり、将来の社会保障の姿を懸念して、消費を抑制した可能性もある。

 日本経済にとって、これからの2~3年が非常に重要な時期で、2018年3月に黒田日銀総裁の任期、さらに2018年秋には安倍首相の自民党総裁任期が終わる。2018年以降の金融・経済政策がどうなるかは日本経済にとって大きなカギを握るかもしれない。同じ方向であればいいが、政策が大きく変われば、日本経済の先行きも大きく変わる。好条件の揃っている間にしっかりとした成長戦略を実行すると共に緩やかに社会保障の効率化をはかっていくことが大切である。(第52話に続きます)

 

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所

経済調査部 主席エコノミスト

永濱利廣

 

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ジパング・ジャパン

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