エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第44話)

第44話:GNIが目標の理由 

 経済のグローバル化により新興国が台頭し、少子高齢化により国内経済が成熟する中では、国内総所得(GDI)を大幅に増やすことは困難である。 

 GDIは国内(D)の経済活動による所得(I)を表している。国際収支における経常収支は、貿易収支やサービス収支、所得収支、経常移転収支に分けられ、GDIには貿易・サービス収支しか計上されない。これに対して、GNIは、国民(N)を対象としており、海外への投資で得た配当などの所得収支を含む。 

 したがって、GDIは国内の所得規模を測る代表的な指標ではあるが、国民全体の所得状況を見るには所得収支を含んだGNIがより適切な指標となる。 

 そこで、経済の成熟化に伴い海外投資を積極化した19世紀の英国のように国民全体の総所得を示すGNIを増やすことに活路を見出さざるを得ない。19世紀後半から20世紀初めにかけての英国は、経済が成熟化して国内での投資機会が減少する中、北米など当時の新興国への投資を積極的に進め、投資収益を獲得したことで、貿易赤字をはるかに上回る所得収支黒字を計上し、国民所得の拡大を可能とした。 

 GNIを増やすには3つの視点が重要である。第1に、GDIを増やすことである。そのためには、国内所得を生み出す源泉となる国内企業の雇用機会を増やす必要がある。企業の6重苦を緩和するためには、税制改革や経済連携協定の推進による立地競争力の強化が鍵となろう。 

 加えて、交易損失を減らすことが重要だ。現在、米国の9倍の価格で中東から輸入されている液化天然ガス価格を引き下げるだけでも、相当な交易損失の減少につながる。それを実現するための積極的な通商政策が必要となる。 

 第2に、新しい分野での雇用を生み出すことだ。そのためには、人口が減少する中でも市場の拡大が期待される医療・介護や教育・保育、農林水産などの分野での規制改革が必要だろう。結果としてこれらの分野で需要喚起が実現すれば、農産品の輸出増や女性の労働参加も促されよう。 

 第3に、それでも補えない部分を海外への直接投資や証券投資などから利益を上げる所得収支で稼ぐことだ。投資やサービスのさらなる自由化、国際間の人材移動の活発化などにより直接投資や証券投資収益を拡大させることが重要な課題となる。 

 また、投資協定の締結などを通じて、対外投資で稼いだ海外資金の国内還流を阻害する要因を除去する必要もあろう。加えて1700兆円にも上る家計金融資産の運用パフォーマンスにグローバルな経済成長をより反映させることで、証券投資収益を拡大させる取り組みにも期待したい。(第45話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所 

経済調査部 主席エコノミスト 

永濱利廣

 

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【1986年→1989年】 原油価格が1/3に下落 史上最低の公定歩合 公共事業費が増加に NTT株公開 消費税導入 「死んだふり解散」で自民党圧勝 「前川リポート」による構造改革 ブラックマンデーと、その後の急回復  

 

【2014年→2017年】 原油価格が1/2に下落 金融の異次元緩和 機動的な財政政策 郵政株公開 消費税増税 「アベノミクス解散」で与党圧勝 「日本再興戦略」による構造改革 中国ショックと、その後の急回復?   

投稿者:

ジパング・ジャパン

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