エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第4話)

第4話:四半世紀に一度の好環境

 今後の物価の伸びが鈍化する理由の一つに、原油価格の下落がある。日本のような原油の大量輸入国は、円建ての原油価格が下落すると、所得の海外流出が急激に減ることになる。仮に年末にかけて原油価格が60~70ドル/バレルまで戻ったとしても、今年は所得の海外流出が年間9~10兆円抑制されることになり、家計への影響を計測するだけでも消費税率を1%程度引き下げるのと同等の効果となる。

 さらに春先以降は、今年度の補正予算3.5兆円の効果が出てくることが期待される。昨年度の補正予算ではかなりの部分が公共事業に回され、家計向けの減税は6000億円ほどにとどまったが、今回はアベノミクスの副作用で割を食っている家計や中小企業、地方に半分程度割り当てられることになっている。

 更に、4月以降は実質賃金がプラスになることで個人消費も力強さを増すことが予想されるため、今年の景気は年半ば頃から勢いを増すことになりそうである。

 以前も指摘したことがあるが、2014年は1986年と状況が非常によく似ている。1986年の日本は、前年のプラザ合意によって円高不況に陥った。そこで、それまでの輸出主導ではなく内需主導の経済成長を目指すべきだということで、金融・財政政策が積極的に打ち出された。これに対し、今回も消費税率アップによる景気後退を受け、さらなる引き上げを先送りして経済対策を打ち出し、日銀もサプライズ緩和といった形で金融・財政政策を積極的に行っている。

 更に似ているのが、原油価格の暴落とその背景である。86年当時は原子力発電の台頭により産油国が意図的に増産して価格を下げたといわれているが、今回もシェールオイルの台頭により産油国がシェアを確保するために価格を下げているといわれている。シェア確保が目的であれば、1980年代後半がそうだったように当面原油価格が元の水準に戻ることはないだろう。

 また、自民党が選挙で大勝したという点も同じである。このような経済の好環境を受けて、80年代後半にはバブルが起こった。しかし、今回は土地神話がなく人口オーナス期に転じているため、バブルになる可能性は低いと考えている。

 このように、少なくとも国内の経済面でいえば四半世紀ぶりの好環境が整っているといえる。一方で2017年4月に消費税率の引き上げが控えていることからすれば、こうした好環境は来年頃までは続くと期待される。その間に、岩盤規制の打破や人口対策を中心とした成長戦略、痛みを伴う社会保障の効率化等をいかに進められるかが、アベノミクスの命運を握っていると言えよう。(第5話に続きます)

第一生命経済研究所  主席エコノミスト 永濱 利廣
第一生命経済研究所 
主席エコノミスト 永濱 利廣

投稿者:

ジパング・ジャパン

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