エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第253話)

第253話:「コロナショック」に必要な経済対策メニュー⓶

 自民党内の一部で出ている「消費税率0%」案は、短期間の時限措置であれば、かなりの消費押し上げ効果が期待できるかもしれない。しかし、仮に新型コロナウィルスの終息宣言が出るまで、というように期限を区切ったとしても、それが1年続くと、消費税収に代わる27兆円以上の財源が必要になる。従って、仮に9カ月続いても財源が4.3兆円程度で済む全品目への軽減税率適用で、昨年⒑月の消費税率10%引き上げ前の8%の税率に時限措置で戻す案の方が現実的といえよう。

 また、リーマンショック時の土日祝高速料金引き下げは渋滞を引き起こすことになって失敗した。したがって、当時の経験から考えると、今回は新型コロナ問題が収束した後に、全国的な行楽や旅行需要を早期に回復させるべく、平日の高速料金引き下げや旅行・宿泊費の給付などを検討してもいいのではないか。特に平日の高速料金引き下げなら需要の平準化も期待できる。

 設備・住宅投資促進策では、リーマンショックの際には太陽光発電の導入を加速する施策が実施された。今回は、感染拡大を抑えるため企業のテレワークや、全国の学校の臨時休校などが行われたが、リモート設備の導入が中国などに比べて遅れていることが露呈した。従って、追加経済対策では企業のリモート設備導入を加速する施策が必要だ。加えて「リモートニューディール」構想として、学校や家庭にもリモート学習が可能な設備を導入するための支援措置が期待される。

 また、雇用については 雇用維持のために雇用調整・中小企業緊急雇用安定助成金を活用し、失業者に対しては緊急人材育成や就業支援基金で再就職を支援するほか、ふるさと雇用再生特別交付金や緊急雇用創出事業で新たな雇用を作る。企業金融については緊急対策の公的金融機関による緊急貸付や保証枠拡充などの支援が求められる。

 医療や感染症対策ではすでに緊急経済対策でも打ち出されている国内への感染を防ぐための水際対策や国際連携の強化、国内の医療体制の整備などで一層の予算措置が拡充されることが必要だ。

 このように大規模な財政出動を唱えると、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の赤字の拡大を懸念する声もある。だが本来なら、日本はバブル崩壊以降の長期停滞が続いてきた中でもっと早い段階で積極的な財政出動を行い、経済を正常化させるべきだった。

 金融政策に頼りすぎたことで、利子率の低下から投機的動機による貨幣需要が増え一部の不動産投資は増えても、実体経済の回復につながる前向きな投資にはなかなか結び付かず、通常の金融政策が効力を失う、いわば「流動性の罠」に陥っている。

 米国では著名な主流派経済学者達が最近では財政政策の重要性を訴えている。元米財務長官のサマーズ氏は長期停滞論を背景に、自然利子率が低下して金融政策が有効性を失っている状況では、財政政策がより重要としている。元MIT教授でIMFチーフエコノミストだったブランシャール氏も、低金利環境下では財政政策を積極的に活用すべきと訴えていることは傾聴に値しよう。(第254話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

MMTとケインズ経済学

21世紀版のケインズ革命は、今まさに起こっているのか?
例外的な環境下において、赤字財政を推進したケインズの学説は、経済学に大きな影響を与え、ケインズ革命と呼ばれた。MMTはインフレ率に注意さえすれば、赤字財政は際限なく出すべきと主張する。本理論は21世紀のケインズ革命となるのか?

第1章  ケインズ経済学の衝撃

第2章  MMTとは

第3章  ケインズ経済学とMMTの違い

第4章  MMTの考え方(MMTは日本で実現するのか?)

第5章 アベノミクスの検証

第6章 日本の財政の誤解

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投稿者:

ジパング・ジャパン

「にっぽん」を世界へ、情報発信していく会社です。

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