エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第251話)

第251話:コロナショックに必要な経済対策規模

 政府は新型コロナウィルスの感染拡大による景気悪化に対応すべく、4月に緊急経済対策をまとめることが期待されている。特に経済対策の規模については、景気後退+消費増税+新型コロナウィルスの3重苦に対して、大型の補正予算が組まれることが予想される。そこで以下では、まず必要な経済対策の規模から計測してみよう。

 経済対策の規模を設定する際に一般的に参考にされるのが、潜在GDPと実際の実質GDPのかい離を示すGDPギャップ率である。そして、直近の2019年10-12月期のGDPギャップ率は、内閣府の推計によれば▲1.4%とマイナスに転じている。

 しかし、直近の民間エコノミスト経済成長率平均予測(ESPフォーキャスト3月調査)に基づいてGDPギャップ率を延伸すると、2022年1-3月期時点で▲1.8%のデフレギャップが生じることになる。従って、このGDPギャップを解消するのに必要な規模の経済対策を前提とするだけでも10.0兆円規模の追加の経済対策が必要になる。

 ただし、3月以降に自粛や風評被害が拡大した新型コロナウィルスの影響によって、3月以降の予測でGDPギャップの予測がさらに拡大していることが予想される。実際、過去のGDP統計に基づけば、自粛や風評被害が2四半期にわたって続いた2011年3月の東日本大震災と、3年近くにわたって消費低迷が続いた2014年4月消費増税の時は、GDPの実績がトレンドからそれぞれ▲3.8兆円、▲3.7兆円程度下方に乖離している。

 また消費増税の影響も、前回はトレンドから▲0.9%の乖離にとどまったものの、今回は一昨年11月から景気後退期にあったこともあり、▲2.3%もトレンドから下方に乖離している。

 こうした状況に基づけば、すでに新型コロナウィルス緊急対応策として第一弾で153億円、第二弾で4,308憶円の財政措置を打ち出しているが、これに加えて需給ギャップの解消に必要な需要創出額10兆円以上の財政措置が必要となる。つまり、今回の影響規模からすれば、市場の不安を軽減するという意味でも、既に打ち出されている新型コロナウィルス緊急対応策を除いて、最低でもGDP比で2%近い規模が必要となろう。

 ただ、リーマンショック前後の経済対策は真水でトータル32.2兆円だった。こうしたことからすれば、リーマン級の対策をする場合は、昨年の真水13.2兆円規模の経済対策を除いても20兆円近く必要となろう。

 さらに、トランプ政権がまとめようとしている対策は総額1兆ドルである。そして主なメニューは、現金給付や給与税減免、新型コロナで売上高が急減する航空会社や宿泊業の資金支援が盛り込まれそうだ。従って、経済規模が米国の約四分の一である日本が同等の経済対策を実施するとすれば、25兆円規模の経済対策が必要となろう。(第252話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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