エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第248話)

第248話:新型コロナで3.3兆円経済損失の可能性

 新型肺炎の感染が日本国内でも広がり、さらなる感染の拡大に警戒が強まっている。今後は全国的にウィルスが広まる恐れも出てきた。従って、新型肺炎の流行がさらに広がれば、これまでのインバウンドやサプライチェーンへの影響に加え、感染を避けるために外出やイベントを控える動きが広がること等を通じて日本経済にも悪影響が及ぶと考えられる。

 最も懸念されるのは、前回の東日本大震災後のように、人々が経済活動を自粛することで、個人消費にとって大きな打撃になることが予想される。東日本大震災後の外出やイベントの停止が相次いだ2011年前半のように、新型肺炎の影響で国内での自粛の動きが深刻化することになれば、個人消費が大幅に落ち込む可能性がある。

 GDPを構成する名目家計消費(除く帰属家賃)についてみると、東日本大震災後の自粛の動きが最も深刻化した2011年前半には、自粛がなかったと仮定して線形補完した場合と比べて、2四半期で▲2.2兆円下押しされた計算になる。

 従って、足元の名目家計支出(除く帰属家賃)が東日本大震災前に比べて+4.8%程度拡大していることを勘案すれば、今回、東日本大震災後並みの自粛となった場合の名目家計消費は2四半期で▲2.3兆円以上減少することになる。

 なお、こうした自粛の悪影響を受ける可能性がある分野としては、宿泊や運輸、小売、レジャー、外食、旅行、イベント関連等が想定される。一方、宅配や通販、テイクアウト、テレビ、ゲームなどの巣ごもりや、テレワーク、通信などの在宅勤務関連消費には特需が発生する可能性がある。

 一方、インバウンドへの影響も、国内で感染拡大が広がれば、SARS(重症急性呼吸器症候群)よりも影響が拡大し、東日本大震災並みの影響が及ぶ可能性もある。推計結果によると、東日本大震災後のサービス輸出は3四半期で▲0.5兆円以上程度押し下げられたことになる。しかし、当時に比べてサービス輸出はインバウンドの増加等により1.9倍になっている。このため、こうしたインバウンドの増加などを勘案したうえで、今回も同程度の影響が出現すると仮定すると、インバウンドの減少等により▲1.0兆円程度サービス輸出が下押しされることになる。

 結局、先に試算した家計消費への影響にサービス輸出の影響を含めれば、自粛等の動きや風評被害が深刻化した東日本大震災後と同程度の影響を前提とすれば、トータルで東日本大震災後の▲2.7兆円を上回り、▲3.3兆円程度下押しされることになる。

 ただし、この試算は、あくまで今年の前半中に国内での自粛の動きが落ち着き、海外における日本の風評も秋までに落ち着くといった前提である。したがって、東日本大震災後と比較して自粛等や風評被害が長期化すれば、その場合には想定以上の悪影響が及ぶリスクもあることには注意が必要となろう。

 このため、政府は感染拡大を一刻も早く食い止めることに全力を尽くすとともに、潤沢な資金供給によって、この間の企業倒産などを最小限に食い止めることが最優先といえよう。(第249話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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