エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第246話)

第246話:新型肺炎が中国経済に及ぼす影響

 新型コロナウィルスの感染拡大が止まらない。中国本土だけで感染者数は4万人を超えており、日銀の黒田総裁も、4日の参議院予算委員会の発言でその影響がSARSの時よりも大きくなる可能性を指摘している。

 これに対して、新型コロナウィルスに対する日本政府の対応を経済的な観点から見れば、中国の初動が遅れる中で、最大限やれることはやっているように映る。しかし、メディアの過剰報道などもあり、消費者心理や経済に悪影響を与えている部分もあるため、政府は正しく恐れるように情報発信を強化すべきだろう。

 中国の民間シンクタンク「恒大研究院」の試算によれば、飲食や小売り、娯楽・観光産業など春節関連の損失だけで▲1兆元(▲16兆円)以上の損失となり、2020年の中国GDP成長率は5~5.4%と試算している。また、中国社会科学院の張明氏によれば、このままサービス業や消費へのダメージが続けば、2020年1-3月期の中国経済成長率は5%台を下回る可能性も排除できないと指摘している。

 そこで以下では、2003年SARS当時を振り返り、中国の経済成長率がどれだけ押し下げられた可能性があるかを試算した。具体的には、最もSARSが流行した2003年度に経済成長率がそれまでの水準からどの程度乖離したかを調べた。

 計測結果によると、SARSの際には2003年度の経済成長率が▲0.9%以上押し下げられたことになる。当時はSARS以外にイラク戦争の影響も加わっているが、今回も当時と同程度の影響が出現すると仮定すると、上述の中国の民間シンクタンクの試算はリーズナブルな数値といえよう。ただし、当時の中国GDPの世界シェアが4%だったのに対して、昨年には18%程度まで拡大していることからすれば、世界経済への影響が今回の方が大きくなることは容易に想像できよう。

 特に「新型コロナウィルス」の影響で止まっている中国のサプライチェーン稼働の見通しが立たないと、日本をはじめとした世界経済への影響も大きくなろう。場合によっては、部品や製品の供給減により、製品が値上げされる可能性も否定できない。一方で、原油価格が急落しているため、エネルギー価格が下がる恩恵が部分的に生じるだろう。

 こうした「新型コロナウィルス」の影響を抑えるために、中国人民銀行は公開市場操作で3日に1.2兆元(約18.7兆円)、4日に0.4兆元(約6.2兆円)を金融市場に供給した。その後、上海市場はいったん落ち着いたことからすれば、迅速な対応で株価の底割れを最小限に食い止めたという意味で評価できよう。

 さらに、中国政府は「新型コロナウィルス」で落ち込んだ中国経済を立て直すべく、さらなる財政出動に舵を切ることが予想される。しかし、中国は地方政府や民間部門の債務が膨張しており、今回の対応で景気対策をやりすぎると、リーマンショック後の4兆元景気対策の後にチャイナショックが生じたように、来年以降に予想される景気対策後のデレバレッジ(債務の削減)局面で急減速するリスクがあることには注意が必要だろう。(第247話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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