エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第245話)

第245話:大幅改定相次ぐGDP統計

 GDP統計の改訂が相次いでいる。昨年12月9日に発表された2018年度GDPの第一次年次推計値では、実質成長率が+0.3%とそれまでの速報値の+0.7%から▲0.4%ポイントも下方修正された。また、同日発表された2019年7-9月期の四半期GDP二次速報値では、実質成長率がそれまでの前期比年率+0.2%から+1.8%へ実に+1.6%ポイントの改定となり、市場関係者の混乱を招いた。一方、米国のGDPも改定が行われるが、2019年7-9月期の改定状況(速報同+1.9%→改定+2.1%)を比較しても日本の改定が異常に大きいことが分かる。

 このように、GDPは国の経済成長や景気動向を示す重要な統計であり、世界的にも注目度が高いにもかかわらず、日本のGDPは一次速報と二次速報、さらに確報の各時点で大きく改定されるケースが目立つ。なぜそうしたことが起こるのか。そこで今回は、GDP統計の推計方法の問題点を改めて振り返る。

 結論から述べれば、第一年次推計値(年度末から約9ヶ月後)の改定は、それまでの速報値が需要側と供給側の両面から簡便的に推計されるのに対し、速報値とは異なるより充実した供給側のデータのみから新たに推計し直されることが主因である。

 GDP第一次年次推計値の算出手法を簡単に説明すると、経産省の「生産動態統計」「商業統計表」「事業所統計」等、各種カバレッジの広い供給側の年次データを使用したコモディティー・フロー法(以下 コモ法)と呼ばれる手法によって算出される。これは、品目ごとに当該年度における生産、輸出入、在庫増減等を把握して総供給を推計し、これらの品目を流通段階ごとに消費、投資などの需要項目別に金額ベースで把握する方法である。

 一方、GDP速報値の個人消費と設備投資は、①需要側統計と②供給側統計の両面から算出される。①は前期の実績をベンチマークとして、総務省「家計調査」「家計消費状況調査」や財務省「法人企業統計季報」等の四半期別に得られる需要側統計の前期比で延長して推計している。これに対し、②は第一次年次推計値と同様コモ法により算出される。しかし、第一次年次推計値で用いられる基礎統計は年次データしか取れないため、速報では経産省「生産動態統計」や総務省「サービス統計」、国交省「国土交通月例経済報告」等、四半期別に得られる供給側の統計を使用し、品目数も確報から大幅に束ねて算出している。そして、この前期比を用いて前期の実績をベンチマークとして延長推計することで算出される。

 こうして得られた①と②の推計値が統合され、最終的な速報値となる。従って、第一次年次推計値が改定されるのは、家計(消費状況)調査や法人企業統計季報といった需要側の基礎統計から推計された推計値と、コモ法によって供給側統計から推計された推計値にかい離が生じることが原因と言える。(第246話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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