エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第244話)

第244話:新型肺炎の経済への影響

 強い毒性を持つ新型コロナウィルスが中国から海外へ飛び火し、世界中が感染の拡大に警戒を強めている。今後は世界的にウィルスが広まる恐れも出てきた。

 新型コロナウィルスの流行が広がれば、感染を避けるために旅行や出張を控える動きが広がること等を通じて、日本経済にも悪影響を及ぼすと考えられる。

 2002~2003年に流行したSARSの事例を基に、新型コロナウィルスが流行した場合の我が国経済への悪影響を試算すると、名目GDPを約▲5,270億円押し下げる結果となる。これは、年間の名目GDPの約0.1%に相当する額となり、SARSの時の影響(▲5,359億円)と比べてその押し下げ効果は同等だが、今回は当時よりインバウンド消費が5倍以上拡大していることから、特にサービス輸出の減少が大きくなることが予想される。

 GDPの家計消費=国内家計消費+居住者家計の海外での直接購入-非居住者家計の国内での直接購入であることと、足元の旅行総取扱額と居住者家計海外直接購入がSARS前に比べて水準が下がっている一方で、非居者家計国内直接購入額が拡大していることを勘案すれば、名目GDPベースの家計消費が約▲4,470億円下押しされることになる。

 しかし、インバウンドが減少すると、サービス輸出の減少という経路を通じてもわが国の名目GDPに悪影響が及ぶ。前回SARS時以降のインバウンドの増加を勘案したうえで、今回も同程度の影響が出現すると仮定すると、インバウンドの減少により▲3,414億円程度サービス輸出が下押しされることになる。

 一方、日本居住者の海外旅行の需要が減少すれば、海外での支払い減を通じてサービス輸入の減少につながる。そこで、この影響についても同様に試算すると、今回SARS並みの影響が出た場合は旅行収支の支払が▲2,614億円減少することになる。

 SARSの時と比較すると、インバウンド消費の増加に伴うサービス輸出の落ち込みが格段に大きくなることが特徴である。

 これまでのマーケットは、米中摩擦の一時休戦や海外経済の持ち直し期待等もあり、株価を中心に堅調に推移してきた。しかし、国内経済を見ると、増税や原油価格の上昇等といった国民負担の増加が懸念材料となっている中、中国で発生した新型肺炎の悪影響も懸念材料となりつつある。

 したがって、増税等で景気が低迷する中で今回のウィルス拡大は、春節のインバウンドや半年後の五輪に期待していた日本経済にとって最悪のタイミングといえる。SARSは約4カ月で収束したが、新型肺炎がそれよりも長期化すれば、さらに悪影響は大きい。SARSと比べて感染が大規模になれば、その場合には想定以上の悪影響を及ぼす可能性があることにも注意が必要となろう。(第245話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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