エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第241話)

第241話:悪化が明確化する日本経済に暖冬が思わぬダメージ

 過去の冬場の気象の変化が家計消費全体にどのような影響を及ぼしたのかを見るべく、国民経済計算を用いて 10-12 月期の実質家計消費の前年比と全国平均の気温の前年差の関係を見ると、10-12 月期は気温が上昇した時に実質家計消費が減少するケースが多いことがわかる。従って、単純に家計消費と気温の関係だけを見れば、暖冬は家計消費全体にとっては押し下げ要因として作用することが示唆される。

 そこで1990年以降のデータを用いて、10-12月期の全国平均気温を説明変数に加えた実質消費関数を推計し、冬場の気温がマクロの家計消費に及ぼす影響を試算してみた。これによると、10-12 月期の実質家計消費と気温との間には、気温が+1℃上昇する毎に同時期の家計消費支出が▲0.6%程度押し下げられるという関係が見られる。これを金額に換算すれば、10-12 月期の平均気温が+1℃上昇すると、同時期の家計消費支出を約▲3,604億円(▲0.6%)、実質GDPを約▲2,514憶円(▲0.2%)程度それぞれ押し下げることになる。

 従って、この関係を用いて今年 10-12月期の気温が記録的高温となった2015年と同程度となった場合の影響を試算すれば、平均気温が平年比で+1.2℃上昇することにより、今年10-12月期の家計消費は平年並みだった時に比べて約▲4,306億円(▲0.7%)、実質GDPは約▲3,004億円(▲0.2%)程度それぞれ押し下げられることになる。このように、暖冬の影響は経済全体で見ても無視できないものといえる。

 なお、今回の試算では2015年並みの暖冬となったことを前提に試算しているが、今後も暖冬が続くとは限らない。しかし、実際に暖冬になれば、気象要因により家計の消費行動に大きな変化が及ぶことも十分に考えられる。

 2015 年の場合、前年の低温の反動や暖冬に加えて、チャイナショックに伴う株価の下落や消費マインドの低迷も手伝って、同年10-12月期の家計消費支出(除く帰属家賃)は前期比年率▲2.7%となり、同時期の経済成長率は前期比年率▲1.2%とマイナス成長に陥った。

 今回も、10-12月期は既に消費増税と台風の影響等により、経済成長率と関連が深い鉱工業生産指数は予測指数などを加味すると前期比▲4.6%となる。したがって、2月に公表となる2019年10-12月期の経済成長率も大幅なマイナス成長になる可能性が高い。

 以上の事実を勘案すれば、今後の気象動向次第では、悪化が明確になりつつある日本経済に暖冬が思わぬダメージを与える可能性も否定できないだろう。特に足元の個人消費に関しては、消費増税や自然災害等のマイナスの材料が目立っているが、今後の個人消費の動向を見通す上では、さらに暖冬といったリスク要因も潜んでいることには注意が必要であろう。(第242話に続きます)
 

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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