エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第232話)

第232話:開催後に判断されるラグビーW杯の成否

 ラグビーW杯が盛り上がった背景には、ラグビー強豪国の訪日客一人当たり旅行支出の効果も大きかったものと思われる。観光庁によれば、昨年の訪日客一人当たり旅行消費額は、イングランド、スコットランド、ウェールズ、一部アイルランドを含む英国が約22万円、オーストラリアが約24万円と、平均の約15万円を大きく上回っていることがわかる。

 また、2009年度からの家電エコポイントの対象となったテレビの駆け込み需要が2009~2011年にかけて発生しており、2019年はそこから9年を経過していることに加え、10月に消費税率の引き上げを控えていたことから、その時に販売されたテレビの買い替え需要も出現したようだ。

 特にテレビに関しては、2011年7月の地デジ化に向けて多くの世帯で買い替えが進んだため、買い替えの潜在需要はかなりあったことが想定される。ラグビーワールドカップのみならず、2020年に東京五輪が控えていることも、買い替え需要の顕在化を後押しした可能性があるだろう。

 しかし、地方のスタジアム等のインフラ整備等に貢献したラグビーワールドカップ特需の勢いは、既に大会開催前の2018年中にピークアウトしている可能性が高い。

 このため、最も注意しなければならないのは、開催後の開催都市経済の反動減だろう。2次利用できない施設は、負の遺産となる可能性もある。消費増税に伴う需要の先食いと実需の減少も相まって、開催後の開催都市の経済には反動減が生じることが予測され、その対策が求められよう。

 また、インフラ整備の名を借りて、無駄なものを作りすぎてしまっている場合には、財政の健全化にマイナスに働くことも考えられることには注意が必要だろう。

 こうしたことから、興行的に成功で終わるかどうかは、国際的な注目が集まったことで、大会後にも世界各国からの旅行者や企業を呼び込むきっかけになったかどうかで判断すべきだろう。

 政府は2020年に訪日外客数4000万人の誘致を目指している。このため、今回のラグビーワールドカップ開催により、開催都市を中心に外国人が訪問しやすい環境が進捗したことが期待される。

 こうした課題の進捗は、実は外国企業の誘致にもつながる可能性がある。日本に進出希望の企業にアンケート調査を行うと、ビジネス環境に求める改善点と観光客の不満点は共通している。「世界で最もビジネスをしやすい国をつくる」ことはアベノミクスの目標の一つであるため、ラグビーワールドカップ開催を契機にどれだけビジネス環境が整うかが成否を左右するだろう。

 来年に東京五輪開催を控え、食や農産物等にもビジネスチャンスがあり、各地域は情報発信の仕組みづくりに更なる重点を置くべきである。東京五輪開催後も反動減の少ない分野を狙い、今から市場開拓を進める取り組みも期待されよう。(第233話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

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投稿者:

ジパング・ジャパン

「にっぽん」を世界へ、情報発信していく会社です。

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