エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第230話)

第230話:消費増税後の課題

 今後の消費税率引き上げにおける課題としては、まずデフレ脱却への影響が指摘できる。理由としては、既に内閣府が試算するGDPギャップはプラスだが、ESPフォーキャスト調査に基づけば、フォーキャスターのコンセンサス通りに成長した場合は、2019年10月から消費税率を引き上げることで再度デフレギャップが生じてしまうためである。特に、2014年4月に消費税率を引き上げた際も、引き上げ直前にデフレギャップが一時的に解消したものの、消費税率引き上げ直後に安倍政権発足以前の水準までデフレギャップが逆戻りしてしまった経緯がある。

 また、前回の消費税率引き上げの影響を勘案すると、安定的な財源が確保されることにより税収増が期待できる一方で、家計の恒常的な購買力低下で内需への影響が大きいという声もある。従って、更なる家計向けの支援策等、ある程度の規模の予算を配分した対策は不可欠であると思われる。一方で、将来のさらなる消費税率引き上げ幅を抑制する意味でも、社会保障の効率化も必要な策といえる。

 なお、諸外国においては、標準税率が平均15%を超えているにもかかわらず、食料品の軽減税率が5%以下になっていることからすれば、日本も2023年10月からのインボイスの導入を前提に、標準税率を引き上げる際には軽減税率を引き下げることも検討に値するだろう。ちなみに、今回の酒類・外食を除く食料品を軽減税率の対象とすれば、軽減税率1%引き下げに際して0.5兆円の財源が必要となる一方、標準税率1%引き上げで税収が2.3兆円増えることになる。つまり、8%の軽減税率を0%にするには4兆円の財源が必要となる。あくまで筆者の考えだか、軽減税率を0%にしても標準税率を12%以上に引き上げれば、ネットで消費税収はプラスとなる。従って、将来的にはインボイス導入で益税問題を解消するとともに、標準税率の引き上げと軽減税率の引き下げをすることが検討に値しよう。将来的にも、更なる消費増税を実施しても生活必需性の高い軽減税率の引き下げを併用すれば、その後の消費増税も実施しやすくなるが、逆に負担軽減策をおろそかにして国民の不満を高めてしまうとその後の消費増税が政治的に困難になるだろう。将来の消費税率引き上げを確実なものにするという意味でも、家計負担軽減策は不可決であると考えられる。(第231話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

『エコノミストの父が子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話』~自分の息子と娘のために語り下ろす「お金」の教科書~


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〇「クレジットカードの仕組み」「なぜカンタンにお金が借りられる?」「友だちとのお金の貸し借り」「ものの値段の決まり方」「バイト代や給料の仕組み」「お金がなくなったときどうすればいいのか」「お金を増やすことはできるのか」「無料はほんとうに得なのか?」「君たちもすでに税金を払っている」「修学旅行や部活にだって保険はある」など、中高生の日常に身近なことから「お金とのつきあいかた」を教える。

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投稿者:

ジパング・ジャパン

「にっぽん」を世界へ、情報発信していく会社です。

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