エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第221話)

第221話:高齢無職世帯の平均収支状況

 家計調査(2018年)によれば、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)は、実収入が月平均で222,834円となっている。そして、その内訳を見ると、社会保障給付が203,824円と全体の91.5%を占め、大部分を公的年金等が占めていることがわかる。

 一方で、消費支出が235,615円、税金や社会保険料等の非消費支出が29,092円となっており、月間の収支では41,872円の不足が発生している。そして、月平均の不足額は前年比で大幅に減少しており、過去3年で見ても減少傾向にある。

 しかし、二人以上の高齢無職世帯の実支出は、世帯主の年齢で変化していることには注意が必要だろう。毎月の不足分は世帯主の年齢階層別によって変わってくる可能性がある。そこで以下では、総務省の家計調査年報(2018年)を基に、60歳から5歳刻みで家計の収支を見てみる。

 まず、収入面を見てみると、「実収入」と年金等の「社会保障給付」に分けてみることができる。そして、実収入に占める社会保障給付の割合を見ると、世帯主が60歳以上の「高齢無職世帯」の収入の柱は「社会保障給付」であることがわかる。

 現在の年金制度は、64歳以前の年金は満額の受給とはならない。このため、世帯主が65歳以上世帯の社会保障給付は平均19万円台と安定して推移しているが、世帯主が60-64歳世帯の社会保障給付は11万円台と少なくなっている。このため、二人以上の高齢無職世帯の実収入は、世帯主が60代前半では年金を中心に少なめだが、世帯主が60代後半以降は20万円を上回る安定した収入が続いている。

 続いて、支出面からみてみると、税金等の「非消費支出」を除いた「消費支出」は、世帯主が60代前半で最も高く、月平均で27万円を超えている。しかし、それ以降は徐々に消費支出が減り、世帯主が85歳以上では20万円を若干上回るところまで下がる。

 また、毎月の不足額を見ると、世帯主が60代前半では11万円を上回るが、世帯主が60代後半から70代前半では6万円前後に縮小し、世帯主が85代後半以降に至っては、6,000円以上の黒字になっていることがわかる。

 つまり、仮に世帯主が60代前半まで働き、60代後半からは無職になり、それまでの貯蓄を切り崩して30年間生活すると仮定すれば、今後の年金支給額が不変とすると、((5.8万円+6.0万円+4.2万円+2.3万円)×5年-0.6万円×10年)×12か月=1,029万円の貯蓄が必要と試算される。このため、現役世代も老後のどこかでは無職になることを想定し、退職金も含めて蓄えを形成していくことも重要と言えるだろう。(第222話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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