エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第213話)

第213話:米中対立が深刻化

 米中は「制裁第三弾」として昨年9月に発動した年2000億ドル規模の中国製品および年600億ドル規模の米国製品に対する追加関税率を従来の5~10%から25%に引き上げることになった。また、米国はこれまで制裁対象となっていなかった年3000億ドル規模の製品についても「第四弾」の追加関税を課す準備をしている。

 一般的に、米中の制裁・報復合戦が激化すれば、米中が直接貿易する製品の調達価格が上がり、両国の生産や消費が抑制されることが予想される。更に、両国での生産活動が低下すれば、両国に製品や部品を供給する日本企業の収益押し下げ要因となる。

 まずは、世界経済に対して及ぼす影響を検証してみよう。IMFが推計した米中間の貿易全額に25%の関税をかけたケースのGDPへの影響によれば、米国の国内総生産(GDP)を0.3~0.6% 、中国のGDPを0.5~1.5%押し下げると見通されている。

 世界経済への影響を見た場合、米国の世界経済に占める割合は24%を超え、中国は同16%近くになることからすれば、世界経済の4割を占める米中だけで世界のGDPを0.2~0.4%を押し下げることになる。なお、中国経済は景気対策で底打ちの兆しがみられているものの、米中摩擦で中国経済が急減速するようなことがあれば、米国経済への影響も深刻なものとなろう。

 米中貿易摩擦の激化や世界経済が急減速すれば、日本から両国への輸出入の減少や、両国からの輸出価格の低下を迫られる可能性もあろう。実際、財務省の貿易統計によれば、2019年の日本の輸出額のうち、中国・米国向けとも2割弱となっており、米中の企業や消費者だけでなく、製造業を中心とした日本経済への悪影響も想定される。

 特に、「第四弾」の米国経済への影響には注意が必要であろう。というのも、第四弾には携帯電話やパソコン、衣類、玩具等の消費財が含まれる。第三弾までの対象品目は、産業機械や電子部品、プラスチック製品や集積回路等の中国以外からも代替調達が可能な生産財が中心であった。従って、これまでは中国の生産者が、関税が上乗せされても米国への輸出が減らないように、製品の値下げをすることで、関税引き上げの負担を被ってきた。

 しかし、第四弾はそうはいかないだろう。スマホなどのハイテク製品にも25%の関税が上乗せされることになれば、米国に輸入されるスマホやPCの6割以上は中国で組み立てられているため、米消費者に負担が直撃することにもなりかねない。

 また、米国国内の消費財への関税上乗せでこれまで安定してきた米国のインフレ率が加速するようなことになれば、FRBが利上げをせざるを得なくなり、米国経済の足を引っ張ることになる可能性もありそうだ。(第214話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

「にっぽん」を世界へ、情報発信していく会社です。

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