エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第211話)

第211話:新紙幣・硬貨発行で期待される特需(その1)

 500円硬貨が2021年、千円、5千円、1万円紙幣が2024年を目処にそれぞれ一新されることになった。現在の紙幣は2024年までに20年間使用されることとなり、その後変更する運びとなりそうだが、この変更に伴って様々な需要が発生することが予想される。

 特に、紙幣識別機メーカー各社の2004年3月期決算では、日米の新札特需を追い風に、軒並み売上高、純利益とも過去最高を記録した。こうした新札特需は今回も発生しそうだ。

 経済効果を試算するに当たって、発生するだろうと思われる直接的なコスト(需要)として3つの視点から分析した。具体的には、①新紙幣・硬貨の発行に伴う紙幣・硬貨の発行コスト、②新紙幣・硬貨に対応するため金融機関のATM、CDの改修、買い替えコスト、③自動販売機における改修、買い替えコスト、の以上3点である。

 まず、日本銀行の通貨流通高のデータを元にして、各紙幣がどのくらい発行されているか算出した。それによると、現在、1万円札の発行枚数が約99.7億枚、5千円札が約6.6億枚、千円札が約42.0億枚、500円硬貨が約46.6億枚発行済み(2019年3月時点)となっている。

 これに1枚当りの発行コストを乗じれば、紙幣発行による直接需要が計算できるが、単価は参考文献(末尾参照)をもとに、現在の紙幣と500円硬貨の1枚当たりの平均コストとして1万円札25.5円、五千円札19.5円、千円札10.4円、500円硬貨64.5円をそれぞれ使用した。次回の新紙幣および硬貨は単価が変わる可能性があるが、現時点では正確に算出できないため、上述の通りとした。以上より、新紙幣・硬貨製造には6,114億円程度の需要が見込まれる。

 紙幣の変更を受けて、ATM/CDも改修や買い替え等の対応が必要となってこよう。ATM/CDにおける直接波及に関しては、改修で済ませる場合と新規に買い換える場合の2パターンが考えられる。しかし、ATM/CDの1台当りの値段は単機能なコンビニ向けで平均200万円程度、高機能の銀行向けは500~800万円程度と高価であり、低金利環境にある金融機関としては出来るだけコストを抑制するだろう。そこで、今回の試算ではATM/CDの3割程度を買い替えで対応するという前提で試算した。

 一方、ATM/CDの総数は、金融機関で約13.7万台(出所:平成31年版「金融情報システム白書」(財)金融情報システムセンター)あり、これに2019年2月時点のコンビニ店舗数約5.6万店(出所:日本フランチャイズチェーン協会)にATMが一台あると仮定すると、約19.3万台に上る。このATM/CDの改修費用には幅があるが、今回は、センサーの改造、ソフトの変更、その他事務費等を含め、単価は前回のメーカーからのヒアリング等を勘案し、買い替え金額1割程度(金融機関65万円・コンビニ20万円)を想定した。以上より、ATM/CDの買い替え、改修費用は約3,709億円と計算される。

 次回は、③自動販売機の改良に伴う需要について試算する。

*「1万年の製造コストは20円?額面以上の通貨は「○円」」ZUUonline編集部2016年7月(第212話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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