エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第195話)

第195話:消費増税の総合的影響

 内閣府の最新マクロ計量モデルの乗数を使って、前回2014年4月の消費税率3%引き上げの際の個人消費や経済成長率への影響を試算した。すると、2013年度は駆け込み需要により個人消費の押し上げ等を通じて経済成長率が+0.7%引き上げられた一方で、2014年度は個人消費の押し下げなどを通じて経済成長率が▲1.5%押し下げられたことになる。

 一方、今回2019年10月に軽減税率を導入した上で税率を2%引き上げた場合の効果を試算すると、前年は駆け込み需要で個人消費の押し上げ等を通じて経済成長率を+0.4%押し上げるが、引き上げた年は個人消費の押し下げ等を通じて経済成長率を▲0.8%押し下げることになる。ただ、2019年10月の消費増税では、2.4兆円が幼児教育の無償化や社会保障の充実に充当される一方で、昨年度実施したたばこ税や所得税の見直しなどによる財源確保でも家計負担が0.3兆円増えることになっている。これは、家計全体で実質的に2.1兆円の所得減税になるが、ここにポイント還元やプレミアム付き商品券、住まい給付金、次世代住宅ポイント制度など臨時・特別の予算措置のプラス効果が加わっても、1年目の成長率の押し下げは▲0.7%となると試算される。

 なお、ここに防災・減災、国土強靭化等の対策がGDPの押し上げにつながると、今回の消費増税は、前回と比べて経済成長率の押し下げ効果がもう少し小さくなる可能性がある。ただし、2020年東京五輪の特需の反動減や米国経済の減速が生じる時期と重なる可能性があることには要注意だ。五輪特需は建設投資が主だが、1964年開催の東京五輪では経済成長率のピークは前年の1963年10~12月期だった。2020年8月開催の東京五輪にあてはめると、2019年7~9月期になる。また、2018年春から減税の効果が出てきた米国経済も、利上げや貿易摩擦の影響もあり、2019年後半になると減税効果が一巡して成長率の減速は避けられない。このため、いくら手厚い消費増税対策を実施しても、外部環境次第では税率引き上げが景気腰折れの引き金を引く可能性はあるだろう。

 一方、消費税率引き上げの効果は、財政収支の動向と切り離して評価することはできない。そこで、内閣府マクロ計量モデルの乗数を基に、消費税率引き上げに伴う経済動向の変化を通じて事後的に財政収支/国内総生産(GDP)に及ぼす影響を試算した。

 まず、前回2014年4月の3%引き上げを前提に得られた試算結果によれば、財政収支への影響はGDP比で1年目と2年目が+0.9%ポイント、3年目が+0.8%ポイント程度の赤字縮小要因となる。だが、今回2019年10月の引き上げ案では、税率の引き上げ幅が2%にとどまり、軽減税率と幼児境域無償化、社会保障の充実による支援や臨時特別の予算措置が加わる。このため財政収支への影響はGDP比で+0.1%ポイント程度となり、財政赤字の縮小は2014年の1割強程度にとどまる。

 更に、2020年度までの3年間の事業規模が概ね7兆円程度とされる防災・減災、国土強靭化策も財政赤字の拡大要因となるため、その間の消費増税に伴う財政再建効果はほぼ相殺されてしまうだろう。(第196話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

「にっぽん」を世界へ、情報発信していく会社です。

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