エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第194話)

第194話:消費増税の総合的影響

 2019年10月の消費増税前後における家計の恒久的な負担増加額を試算すると、消費税率引き上げに対応した新たな対策を考慮すれば、年額2.5兆円と前回2014年4月の3割強の負担となる。

 マクロの家計負担増減額は、1997年4月と2014年4月、2019年10月のそれぞれについて、日銀が消費増税前後の家計のネット負担額を試算している。これによれば、1997年は税率の引き上げ幅は2%で、負担増は年5.2兆円だった。しかし、所得減税打ち切りや医療費自己負担増などの歳入増が重なり、直接的には年8.5兆円の大きな歳入増になったと計算されている。

 しかも、景気対策がない中で1997年6月にアジア通貨危機が起こり、同年11月に山一証券の破綻など金融システム不安が生じて景気は腰折れをしてしまった。そのため、所得減等も考慮した最終的な負担増加額は年8.5兆円を大きく上回った可能性が高い。

 また、前回2014年の3%の引き上げは、それだけで年8.2兆円の負担増となり、給付措置や住宅ローン減税などの負担減を考慮しても、直接的には年8.0兆円の大きな負担増と計算されている。こちらも増税以降に個人消費のトレンドが大きく落ち込んでしまっており、所得の押し下げも含めた最終的な負担増加額は年8.0兆円以上と推察される。

 これに対し、2019年10月の消費増税の負担額は、軽減税率を導入せずに税率が10%に引き上げられると、直接的には家計負担が5.7兆円増えることになる。また、昨年度実施したたばこ税や所得税の見直しなどによる財源確保でも、家計負担が0.3兆円増えることになる。

 しかし、酒類・外食を除く食料を軽減税率の対象品目とした場合、1.1兆円の負担減となる。また、全世代型の社会保障制度の転換に向け、2.4兆円を幼児教育の無償化や社会保障の充実に活用することになっている。ここに、消費税率引き上げに対応した新たな対策として臨時・特別の予算措置が加わるが、恒久的な家計の直接的な負担額は年約2.5兆円にとどまることになる。

 なお、臨時、特別の予算措置となる(1)中小小売業等に関する消費者へのポイント還元の0.3兆円、(2)低所得・子育て世帯向けプレミアム付商品券の0.2兆円、(3)住宅の購入者等への支援の0.2兆円などの対策も加味すれば、短期的な家計の負担増加額はさらに少なくなる。また、家計負担には直接影響しないが、重要インフラの緊急点検等を踏まえた「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」に基づき2020年度までの3年間で集中的に実施するため、その対策が発動されている間の増税効果はかなり少なくなるだろう。(第195話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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