エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第181話)

第181話:臨時国会前に打ち出される観測の経済対策

 各紙の報道によれば、政府は自然災害の復旧作業に対応すべく、10月26日に開会予定である臨時国会までに経済対策をまとめるとされている。

 特に経済対策の規模については、西日本豪雨や台風21号、北海道胆振東部地震の復旧・復興に対して、大型の補正予算が組まれることが予想される。

 経済対策の規模を設定する際に一般的に参考にされるのが、潜在GDPと実際の実質GDPのかい離を示すGDPギャップ率である。直近の2017年のGDPギャップ率は、内閣府の推計によれば+0.4%とプラスに転じている。

 しかし、より各国のインフレ率と関係が深いIMFのGDPギャップ率を見ると、2018年の日本の見通しは依然として▲0.2%のデフレギャップが残存していることになる。従って、少なくともIMFのGDPギャップを解消するのに十分な規模の経済対策を前提とすると、2017年の実質GDP531兆円の0.2%分となる1.2兆円程度の追加の経済対策で済む。

 ただし、6月以降に相次いで発生している地震や豪雨、台風によって、巨額な資本ストックの被害が発生していることが予想される。実際、内閣府によれば、前回の熊本地震の被害額を2.4~4.6兆円と試算しており、発生年度に打ち出された補正予算の規模は5.5兆円となっている。また、資本ストックの被害総額が1.7~3.0兆円と試算された新潟中越地震においても、発生年度に打ち出された補正予算の規模が4.8兆円にも上ったことからすると、すでに西日本豪雨への対応などで18年度予算から約1700億円の予備費を支出しているが、それに加えて5兆円を上回る規模の復興予算が望ましい。

既に、10月26日に開催予定となっている臨時国会冒頭において、西日本豪雨対応の補正を提出すると報道されている。具体的には、西日本豪雨対応以外にも、台風被害や北海道胆振東部地震関連対応に加え、学校のブロック塀対策やエアコン設置等の歳出も含まれる可能性がある。ただ、こうしたメニューだけでは事業規模は5兆円に届かないだろう。従って、実際に打ち出される補正予算については、災害対策に加えて国土強靭化関連の歳出を加えるべきだろう。実際、先般の自民党総裁選において、安倍首相は防災・減災の緊急対策を3年間で集中実施するとしていたため、2次補正にはこれに関連するメニューが加わることを期待したい。

 なお、公共事業に関しては、建設業界の人手不足の深刻化により工事が予定通り進まないと懸念する向きもある。しかし、国土交通省の建設労働需給調査によれば、建設技能労働者の過不足率は2014年度以降急速に不足率が縮小して以降は安定している。従って、東日本大震災からアベノミクスの初期段階における補正予算に比べれば、GDPの押し上げ効果は顕在化しやすい可能性がある。日銀は、過去のオリンピック開催国のパターンを参考にすると、関連する建設投資は2017~2018 年頃にかけて大きく増加するとしており、この予想に基づけば2019年以降はその反動減が懸念されるが、この反動減の部分を今年度補正予算における景気対策により緩和することが期待されよう。(第182話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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