エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第145話)

第145話:2018年以降の経済展望(好材料編)

 2018年の景気を占う上では、春闘が大きなカギを握っているだろう。安倍政権は2018年度の税制改正大綱に、賃上げ3%以上と設備投資を行う大企業の法人税を軽減する一方で、賃金と設備投資の伸び率がいずれも不十分な大企業は法人税の優遇措置を停止することを盛り込んだ。また、中小企業も賃上げをすれば税負担を軽減することも打ち出している。いずれにしても、企業の内部留保の活用をにらんで、企業に焦点を当てた税制改正が打ち出されるだろう。賃上げ環境に関連すれば、肝心の企業業績は株価の上昇が示す通り過去最高水準を更新していることに加え、労働需給も完全失業率が3%を下回っており、賃上げの後押しになるだろう。また今回の春闘では、従業員の生活水準が維持できるよう、インフレ率が上昇していることも加味されるだろう。昨年2.11%だった大企業の春闘賃上げ率は2.5%程度になると予想しており、家計に恩恵が及ぶ可能性がある。

 2018年は耐久財の買い替えサイクルに伴う需要効果も期待できると思われる。内閣府の消費動向調査によれば、テレビと自動車の平均使用年数は9年程度となっている。テレビや自動車の販売は2014年4月の消費税率引き上げ前に駆け込み需要で盛り上がったが、更に前に遡ると、2009年度~2010年度にかけても販売が盛り上がっている。背景には、リーマン・ショック後の景気悪化を受けて、麻生政権下でエコカー補助金や家電エコポイント政策が打ち出されたことがある。これで自動車やエコポイントの対象となったテレビ、冷蔵庫、エアコンの駆け込み需要が発生した。2018年は9年目を迎えることから、その時に販売された自動車やテレビの買い替え需要が期待される。特にテレビに関しては、2011年7月の地デジ化に向けてかなり販売が盛り上がったため、買い替え需要は積み上がっていると予想される。2019年10月に消費税率引き上げが控えていることも、買い替え需要の顕在化を後押しする可能性がある。更に、2018年に開催される冬季五輪やサッカーワールドカップ、2019年のラグビーワールドカップ、そして2020年に東京五輪が控えていることも市場を盛り上げる要因になり、テレビの買い替え需要を促す可能性もある。結果として、2018年に期待される賃上げは、耐久財消費市場を活性化させる可能性が高いだろう。

 米国経済もカギを握ろう。米国は2018年から税制改革が実施される。米国経済が順調に拡大する中で、10年間で1.5兆ドル(約170兆円)の大規模な減税が実施されるため、日本経済にとっても短期的にはプラスの効果が高いだろう。一方、減税効果が出現するということは、それだけ米国経済の勢いも増すということになる。FRBの金融政策の打ち出し方次第では、一時的に市場はネガティブに反応するかもしれないが、日本としても、米国経済の拡大を反映してドル高円安となることで、企業業績も拡大しやすくなるだろう。実物経済面でも日本の財やサービスの競争力が増し、輸出も促進されるだろう。こうした点で日本経済にとってプラスの面が大きいのではないか。また、世界最大の米国経済の正常化が、低位に張り付いている日本の長期金利の上昇に結びつけば、日本の金融機関にも好材料となるだろう。(第146話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

『エコノミストの父が子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話』~自分の息子と娘のために語り下ろす「お金」の教科書~


〇教育現場でも中高生から経済学や投資の基礎知識などを教えるべき、という声が広がっているが、それ以前にもっと身近な「お金とのつきあいかた」を知るべきではないか、という思いを込めた1冊。

〇「クレジットカードの仕組み」「なぜカンタンにお金が借りられる?」「友だちとのお金の貸し借り」「ものの値段の決まり方」「バイト代や給料の仕組み」「お金がなくなったときどうすればいいのか」「お金を増やすことはできるのか」「無料はほんとうに得なのか?」「君たちもすでに税金を払っている」「修学旅行や部活にだって保険はある」など、中高生の日常に身近なことから「お金とのつきあいかた」を教える。

〇お金で不幸にならないために、お金で人を不幸にしないために、父親としての願いをまとめた一冊。

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投稿者:

ジパング・ジャパン

「にっぽん」を世界へ、情報発信していく会社です。

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