エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第141話)

第141話:設備投資こそが経済成長の原動力

 国内総生産(GDP)最大の需要項目である個人消費は、日本のGDPの6割弱を占めることから、経済成長を大きく左右する。しかし、家計所得の水準が下方屈折した1998年以降の個人消費は、伸びてもせいぜい年+1%台であり、リーマンショック後の落ち込みでも年▲2%台と変動幅が小さいことが特徴である。これに対して、設備投資はGDPの15%程度と個人消費と比べて規模は小さいわけだが、変動幅が大きいことから、景気への影響力も大きいという特徴がある。

 それによって、『景気循環の原動力はむしろ設備投資』という見方が浮かび上がる。したがって、市場関係者の多くは、昔からこのように考えて景気を判断している。経済学者の考え方も同じである。

 GDPにおける設備投資は、正式には「民間企業設備」と呼ばれている。これは企業が製品やサービスを提供するために購入する機械や建築物、ソフトウェアなどが該当する。そして、設備投資の動向を捉えるにあたって、極めて重要性の高い二つの要素がある。

 最初に取り上げる視点は企業の期待収益率から見る「投資採算」である。これは、投資する資本を上回る収益が得られるかどうかということである。つまり、設備投資は投資による期待収益とコストの関係を企業がどう見るかに依存する。企業が投資コストに見合う収益が期待できると判断すれば、設備投資を増やして生産能力を増強する。逆に、景気の悪化で設備が過剰になると判断すれば、設備投資は抑制される。また、市中の金利が低くなると、それだけ企業の資金調達コストが縮小することから、金利の低下は設備投資の刺激要因となり、逆に企業の期待収益率を上回る金利上昇は、投資採算の悪化を通じて設備投資の抑制要因となる。

 一方、マクロ経済の視点から見る「投資採算」は、実物資産の収益性と金利の差分として定義される。そして、これは企業が実物投資か金融資産投資かの選択を行う際に重要な意味を持つ。

 実物資産の収益率が金利に比べて十分高い水準にある場合は、設備投資が増加基調を示し、逆の場合は減少に転じると考えられている。事実、2000年代後半までは設備投資の増減率とマクロ経済の視点から見るこの投資採算との間には、総じて密接な関係が観察されてきた。しかし、2010年代以降は、金利の低下と実物資産の収益率の上昇から投資採算は上昇したが、設備投資は投資採算の伸びほどは伸びていない。

 そのヒントは、内閣府の「企業行動に関するアンケート調査」に隠されている。この調査では、上場企業の中期的な経済成長率見通しを集計している。これによれば、企業による我が国経済の先行き見通しは、2010年代半ばにかけて厳しさを増していたことがわかる。つまり、いくら現状の実物資産の収益率が上昇しても、企業の期待成長率が上昇しなかったのである。結局は、金利は低水準でも、企業が我が国経済の見通しに楽観的になっていないことが、設備投資の伸び悩みの背景の一つにある。(第142話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

『エコノミストの父が子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話』~自分の息子と娘のために語り下ろす「お金」の教科書~


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〇「クレジットカードの仕組み」「なぜカンタンにお金が借りられる?」「友だちとのお金の貸し借り」「ものの値段の決まり方」「バイト代や給料の仕組み」「お金がなくなったときどうすればいいのか」「お金を増やすことはできるのか」「無料はほんとうに得なのか?」「君たちもすでに税金を払っている」「修学旅行や部活にだって保険はある」など、中高生の日常に身近なことから「お金とのつきあいかた」を教える。

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投稿者:

ジパング・ジャパン

「にっぽん」を世界へ、情報発信していく会社です。

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