エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第14話)

第14話:日本経済と日本企業は別物

 法人税率の高さも我が国経済の地盤沈下を助長してきた。これまで、海外諸国では経済のグローバル化に伴う資本移動の高まりを背景に、国際競争力強化や経済活性化を見据えた法人税率の引き下げが相次いできた。こうした情勢の中で、日本の法人実効税率も漸く2016年度に31.33%まで引き下げられることが決まったが、海外の平均水準と比較すれば依然として5%以上も高い。

 こうした中、法人税率引き下げ競争が激しいEUでは、法人税率引下げと共に法人税収の名目GDPに対する比率が上昇する『法人税パラドックス』と呼ばれる現象が見られている。この成功の要因としては、法人税率引下げと同時に課税ベースの拡大を行ったことや法人成りのインセンティブが働き会社数が増加したこと、更には企業収益が増えて税収が増えたこと、等があげられている。

 また、EU域内を個別に見ても、実効税率がEU平均以下の国とEU平均以上の国の実質GDP成長率を比較すると、実効税率が平均より低い国の実質GDPの伸び率は、高い国より約1%程度高くなっている。

 一方、日本企業はアジアの税制面での魅力に引き付けられるように海外展開を加速させてきた。例えば、タイでは地域統括会社の認定を受ければ法人税率30%を10%に軽減できる。また、スイスでも地域統括会社の法人税率21.17%が5年間5-10%の軽減税率が受けられる。更に中国では、25%の法人税率が適格ハイテク企業の場合に15%に軽減されることになっている。技術立国の日本は、これまで国内で研究開発し、その技術を製品輸出に活かすだけでなく、同時に海外企業から特許料やロイヤリティを受け取る収益モデルに転換してきた。一方、税制面の立ち遅れや規制強化により日本企業の活力が損なわれてきた。

 更に、デフレが長引く中で、日本企業は含み資産経営から脱却すると同時に、利益拡大を優先するスタンスに転じ、人件費の抑制を続けてきた。こうした企業行動の変化も内需の抑制要因となってきた。

 背景には、安価な労働力を大量に供給する新興国企業との競争激化により、世界的に人件費の低下圧力がかかってきたことがある。このため、相対的に賃金水準の高い先進国企業は、海外に現地法人を設立する形で海外進出を行い、国内での雇用者所得が失われてきた。つまり、日本企業が好調であるからといって、日本経済まで好調であるとは限らなくなっており、日本経済と日本企業はもはや別物になりつつあるといえる。人口の減少と経済のグローバル化により、日本企業は経営のグローバル化を進め、更に日本経済から乖離していく可能性が高い。(第15話に続きます)

第一生命経済研究所  主席エコノミスト 永濱 利廣
第一生命経済研究所 
主席エコノミスト 永濱 利廣

投稿者:

ジパング・ジャパン

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