エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第136話)

第136話:米景気と五輪効果の持続性

 2017年は欧米経済が好調だったといえる。特にユーロ圏は、フランス大統領選で親EU派マクロン氏当選等による政治的不安の後退で製造業の景況感が6年ぶりの水準まで上昇している。米国の製造業景況感指数も6年ぶりの水準まで上昇しており、景気は底堅いと言える。これを受けて、日本も欧米に比べてペースが緩いが、景気は拡大している。不動産市場を中心に警戒された中国経済も、金融市場は引き締め方向に進んでおり、バブル崩壊リスクの軽減や、商品市況の安定などにより、実体経済も今のところ安定している。

 ただ、これまで世界経済が好調だったのも、アメリカ経済が長く拡大してきたからこそ続いてきた部分も大きい。アメリカ経済は景気が拡大を始めてから8年以上が経過している。しかし、過去のアメリカの景気回復期間の平均は5年程度であることからすれば、そろそろアメリカ経済も景気回復の終盤に差し掛かっている可能性がある。当然、アメリカも景気後退期に入れば金融緩和の方向に向かうため、ドル安円高により株価が下落し、日本経済の足かせになる可能性があるだろう。

 実は、近年のアメリカの景気循環には法則がある。アメリカのGDPギャップのデータによれば、需要が供給能力を上振れすると物価が上がるため、FRBがインフレの加速を抑えるために金融引締めを強化することにより景気後退に入っている。リーマンショックで大変な需要不足が生じたため、8年間景気回復が続いてもGDPギャップは依然としてマイナスである。しかし、2018年に減税やインフラ投資の効果が出現すれば、需要が刺激されることになるため、需要が供給を上回ることになり、その後の金融引き締めにより、早ければ2019年頃にアメリカ経済が景気後退に入ってもおかしくないという見方もできる。

 日本経済を考えても、オリンピック効果は主に建設投資であり、ピークは開催年の1年前の2019年に訪れる可能性が高い。更に、2019年10月に消費増税も予定されているが、本当に上げられるのか分からない。ただ、景気に関係なく消費税を上げてしまう可能性もあり、これが目先の日本経済の最大のリスクだと思われる。

 また、安倍政権の政権基盤の揺らぎがマーケットを通じて日本経済に悪影響を及ぼす可能性もある。日本株の売買は7割が外国人投資家であり、安倍政権の政権基盤が盤石なほど、外国人投資家が日本株を買い、基盤が揺らぐほど日本株は売られる。従って、2018年9月の自民党総裁選の行方次第では、アベノミクスが終了する可能性があり、そうなれば日本経済も後退を余儀なくされる可能性がある。

 アメリカ経済のリスクは引き続きトランプ政権の政策運営だろう。減税やインフラ投資により経済が良くなれば金利が上がってドル高になり、レパトリ(海外に投資されていた資金が本国に還流すること)により経常赤字の新興国が経済危機、通貨危機に陥る可能性もあろう。また、北朝鮮とアメリカの関係もリスクである。特に北朝鮮と日本は地理的に近いため、万一ミサイルにより国内で被害が出るようなことがあれは、経済へのマイナス影響が大きくなろう。(第137話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

さてこの度、永濱氏の書籍が出版となりましたので、ご案内させていただきます。何卒よろしくお願いします。

『エコノミストの父が子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話』~自分の息子と娘のために語り下ろす「お金」の教科書~


〇教育現場でも中高生から経済学や投資の基礎知識などを教えるべき、という声が広がっているが、それ以前にもっと身近な「お金とのつきあいかた」を知るべきではないか、という思いを込めた1冊。

〇「クレジットカードの仕組み」「なぜカンタンにお金が借りられる?」「友だちとのお金の貸し借り」「ものの値段の決まり方」「バイト代や給料の仕組み」「お金がなくなったときどうすればいいのか」「お金を増やすことはできるのか」「無料はほんとうに得なのか?」「君たちもすでに税金を払っている」「修学旅行や部活にだって保険はある」など、中高生の日常に身近なことから「お金とのつきあいかた」を教える。

〇お金で不幸にならないために、お金で人を不幸にしないために、父親としての願いをまとめた一冊。

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投稿者:

ジパング・ジャパン

「にっぽん」を世界へ、情報発信していく会社です。

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