エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第128話)

第128話:財政再建による景気回復は望み薄

 日本政府の借金がどれだけ深刻な状況にあるかを考えてみよう。国際通貨基金(IMF)によれば、日本における一般政府(国と地方自治体等)の借金残高は、2016年に名目国内総生産(GDP)の2.5倍に上り、主要先進国中で最大である。しかし、2015年には一時的に低下しており、アベノミクス以降の債務残高/GDPは、実は上昇ペースが急速に低下している。

 財政赤字は政府の借金の増加分を示すが、これも2016年時点で名目GDP比4.5%まで縮小し、米国の同5.0%を上回ることでG7諸国の中で最悪のポジションから脱出している。これは、政府の財政問題は景気が良い時に改善しやすいということを示している。

 まず、なぜ財政赤字が減ったかを見ていこう。2016年における政府の財政赤字/GDPは4.5%であった。アベノミクス始動前の2012年は8.1%であったことからすれば、この4年間で財政赤字/GDPは45%近く減っていたことがわかる。

 背景には、2014年4月の消費税率引き上げにより消費税収が増加したこともあったが、それ以上に異常な円高・株安の是正に伴う企業収益の拡大により法人税収が増えたことや、資産価格の上昇を背景とする金融・土地取引関連の税収増による影響が大きかった。

 つまり、財政赤字/GDPが改善したのは、アベノミクスによる景気回復により歳入が増えた要因が大きい。また、税収がより顕著に増えた裏側には、税務上の損失繰り延べ期限を迎えた企業が多かったこと等により、企業が利益に見合った税金を払うようになったこともある。これが、この時期に税収が大きく押し上げられた理由である。

財政危機を回避するためには、政府債務/GDPの上昇を食い止める必要がある。つまり、政府債務/GDPの持続的上昇を食い止めれば、財政の安定化が進むことになる。そして、この問題については、基礎的財政(プライマリー)収支、つまり財政赤字から純利払い費を除いた考え方が必要となる。要するに、債務返済や利払い費を除いた歳出と、国債などの借金を除いた歳入との収支が重要である。

 基礎的財政収支が均衡すれば、その年の政策に必要な経費を税収で賄え、必要な公債発行は過去の債務の元利払いに充てる分だけになる。そして、名目GDP成長率と債務の利回りの水準が等しくなれば、債務残高はGDP比で一定となる。こうした理論的背景もあり、政府は2020年度初頭に国と地方の基礎的財政収支を黒字に転換することを目標にしてきたのである。従って、債務の利回りの水準が名目GDP成長率を下回れば、基礎的財政収支を必ずしも黒字にしなくても、債務残高/GDPの上昇は食い止められるといえよう。

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

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