エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第125話)

第125話:過去の日照不足の経験

 今夏は7月の猛暑から一転、8月は日照不足により、夏物商材の販売が不振となっている。農作物の生育にも遅れが出ており、今後も日照不足が続けば、景気への影響も拡大すると懸念する声も出ている。

 2000年代以降で最も夏の平均気温が低くなったのは2003年であり、この年7-9月期の家計調査(総務省)における実質消費支出は前年比で▲1.4%の落ち込みを示した。更に梅雨明け自体がはっきりしなかった1993年は39年ぶりの冷夏となり、夏物商材の売れ行きが落ち込んだ。また、大雨や日照不足もあり、稲作を中心に農作物に被害が出たことで、翌年にかけてコメ不足に陥った。

 実際、93年の景気回復初期局面においては、年前半の経済指標が改善したこと等を根拠に、株価は3月以降堅調に推移していたが、円高や冷夏に伴う経済指標の悪化が確認されはじめたこと等も影響し、6~7月と9月以降の株価が軟調に推移したという経緯がある。このように、冷夏が株式市場に及ぼす影響にも十分注意が必要だろう。

 夏の低温や日照の少なさといった天候不順は、主に以下の3経路を通じて個人消費の下押し要因として働く。

 第一に、季節性の高い商品の売れ行きが落ち込み、いわゆる夏物商戦に悪影響を与える。具体的には、夏場に需要が盛り上がるビールやエアコン、夏物衣料などの売れ行きが鈍る。梅雨明けの遅れが最も深刻だった93年を例にとれば、大手5社のビール出荷量は、7月が前年同月比▲5.1%、8月が同▲5.7%と2ヶ月連続で減少している。また、エアコンの国内出荷台数も、7月が前年同月比▲16.8%、8月は同▲92.7%と大幅な減少となっている。更には、衣料品の販売額も7月が前年同月比▲7.9%、8月が同▲2.4%と落ち込んだ。

 第二に、海水浴を始めとする行楽客の人出が減少する。このため、レジャー関連産業は打撃を受けることとなろう。実際、93年を例にとれば、93年夏の大手旅行8社の国内旅行取扱高は、7月が前年同月比▲6.0%、8月が同▲4.6%とマイナスになった。

 第三に、農作物の生育を阻害し、冷害をもたらすことが想定される。農作物が不作となれば、農家世帯の所得減を通じて、個人消費にもマイナスの影響を及ぼす。実際、93年は天候不順の影響により農作物に甚大な被害が発生し、米の作況指数は全国平均で74と戦後最低を記録した。この結果、93年度の農業所得は前年度比▲9.7%と大きく減少し、93年の農業の実質国内総生産は前年比▲11.5%と2桁減を記録している。

 そこで次回は、過去の夏場の経済データと気象データとの関係から、具体的に個人消費を通じて日本経済に及ぼす影響を試算してみたい。(第126話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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