エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第114話)

第114話:最も裾野の広い自動車産業

 世界一に上り詰めた国内の自動車産業に危機感が見えている。トランプ政権誕生の煽りを受け、各自動車メーカーは米通商政策の見直しを固唾を飲んで見守っているが、もし輸出立国である日本経済を牽引する自動車産業に打撃が及べば、他の産業にも波及し、国内経済の屋台骨を揺るがすことになりかねない。

 事実、我が国の自動車産業は日本経済を牽引してきた。先進国の経済が比較的好調だったことに加え、新興国の持ち直しが輸送用機械の輸出を促進させ、その結果、名目GDPにおける輸送用機械産業のシェアは大きく拡大した。

 このように、世界の景気回復が続く中で世界的な大型製品である自動車の生産や出荷販売の増加は、生産工場等の設備投資、海外への輸出等の増加を通じて、日本の景気回復の牽引役の一つとなり、自動車部品をはじめとして鉄鋼、ガラス、電子部品など関連する幅広い産業を中心に好影響をもたらすことが期待されている。

 2016年には日本国内で871万台の自動車が生産された。しかし、米国発の通商政策の見直しによって各社が減産に踏み切れば、自動車部品をはじめとして鉄鋼、ガラス、電子部品など関連する産業が多い。従って、裾野の広い自動車産業は、いわゆる経済波及効果が大きくなることから、国内での自動車生産の縮小を通じて国内企業の生産を押し下げることが懸念される。

 事実、2011年の産業連関表(総務省)に基づけば、乗用車に対する需要額が1単位増加すると、関連産業も含めた生産額が3.0単位増えることになり、鉄鋼の2.8単位、広告やパルプ・紙加工品、金属製品、化学基礎製品の2.3単位に比べて生産誘発効果が大きいことが確認される。

 自動車産業の波及効果が大きい理由は、その生産構造を見ることで明らかになる。産業連関表で乗用車の生産構造をみると、100万円の「乗用車」を生産するために86.7万円の原材料が必要になるのだが、その内訳をみると、「自動車部品・付属品」が53.7万円、「鉄鋼」が4.7万円、「プラスチック・ゴム」が4.2万円、「教育・研究」が4.1万円、「商業」が2.9万円等となる。

 また、自動車産業を起点とした波及効果はこれらの原材料である「非鉄金属」や「産業用電気機械」といった多種多様な部門にも及ぶ。こうした波及経路が存在することが自動車産業の裾野の広さになっており、他の産業への影響力を高める要因となっている。(第115話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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