エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第113話)

第113話:平均消費性向低下の背景

 平均消費性向が低下している。この背景としては、①原油価格の下落などによるガソリンを含む「自動車等維持」や「電気代」の支出減、②2014年4月の消費税率引き上げに伴う需要の先食いを通じた「自動車等購入」やリフォームなどの「設備修繕・維持」の支出減‐‐が主因となっている。

 しかし、昨秋以降は循環的に景気が回復しつつあり、原油価格が昨年以降の減産合意等から持ち直し傾向で推移する一方、主要国のインフレ率上昇を受けて、市場の期待インフレ率も上昇している。こうなると、世界のマネーの流れは、安全資産の国債からリスク資産の株やコモディティーに流れやすくなることに加え、為替もリスク回避通貨とされる円が買われにくくなり、今後も昨年より高水準のガソリンや電気代の価格が維持される可能性が高い。したがって、今後のガソリン等を含む「自動車等維持」や「電気代」の支出は昨年よりも増加すると見ておいたほうが良い。

 一方、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減も永遠に続かない。需要の先食いといっても、5年も10年も先の需要まで前倒しできないためだ。事実、経済産業省「商業動態統計」によれば、自動車や機械器具小売業の販売額指数は、いずれも昨年中に底打ちをして、持ち直し基調にある。従って、ガソリンや光熱費が上昇する中で消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動が軽減すると、特に車や家電、リフォーム等の支出を中心に全体の消費支出の拡大要因となる。

 更に重要なのは、耐久財の買い替えサイクルも到来しつつあることがある。事実、経産省の商業販売統計で自動車や機械器具小売業の販売額指数を見ると、2009~2010年にかけたエコカー補助金や減税、地デジ化、家電エコポイント等により指数が盛り上がっており、その後反動減となっている。こうした耐久消費財の中でも、新車やカラーテレビについては平均使用年数が9年程度となっており、2017年以降に買い替えサイクルが本格化することを表していると言えよう。そして、こうした買い替えサイクルの到来は平均消費性向のさらなる上昇を招くと言える。

 こうした状況に対し、世間では2015年以降の平均消費性向の急低下について「節約志向」との見方がされている。しかし、原油価格の下落に伴う余分なエネルギー出費の減少により平均消費性向が低下しても、それは節約とは言えず、駆け込み需要の反動による一時的な平均消費性向の低下も割り引いて考える必要がある。

 つまり、本当の意味での節約には、単純な消費支出の減少だけでなく、家計の実収入の減少や増税等による非消費支出の増加等を通じた可処分所得の減少により消費支出がやむなく減少することが不可欠といえよう。従って、消費者心理を評価する場合は、単純な可処分所得と消費支出の関係だけではなく、その背景にある要因を分解して慎重に判断すべきではないだろうか。(第114話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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