エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第108話)

第108話:AIと投資

 AIやIoTという言葉を連日耳にする。金融マーケットにもAI発達の影響は見受けられ、ボラティリティは大きくなっている。例えば昨年、ポンドのフラッシュクラッシュがあった。真相は不明だが、イギリスのメイ首相のネガティブな発言に対して、AIのプログラミング、いわゆるアルゴリズム取引が反応し、一気にとてつもない量のポンド売り注文が殺到した可能性が指摘されている。

 今後もボラティリティが高まる傾向は続くと思われる。トランプ大統領誕生の乱高下もそうだった。東京市場はトランプ大統領誕生で条件反射的に「リスクオフで売り」であった。しかし、その後の議会選挙で上下院共和党過半数となりねじれが解消され、トランプ氏が唱える大規模なインフラ投資と減税の実現可能性が高まり、米国経済は短期的に成長する可能性が高いということで買い戻された。

 おそらく「トランプ大統領誕生で売り」のアルゴリズム取引が大量に仕込まれていた可能性が高い。つまり、AIは大統領選速報のヘッドラインだけを見て売り注文を出した。そのため、本質的な価値を見誤り、東京市場で買い向かった人は大きな果実を得ることになった。このように、現在のマーケットはボラティリティの大きさを逆手に取った投資ができる一つの事例であろう。

 一方、AIの発達によって将来多くの職がなくなると言われている。日本では、良い大学に行って一流のホワイトカラーを目指すべきといった風潮が強いように感じられる。しかし、ドイツやスイスであれば、頭を使って生計を立てていくか、手に職をつけて生計を立てていくかについて、若い段階で選択が迫られるデュアルシステムが導入されている。日本でいえば、高校に進学するときくらいに将来のざっくりとした道筋を描くことになる。

 スイスの時計がなぜ世界中で評価されているかというと、熟練工を育成する制度、評価する土壌があるからだろう。製造業のみならず、手に職をつけることがAI時代を生き抜くひとつの方法ではないだろうか。

 近年は、タンス預金が増えたり、金庫が売れたりという話が聞かれるが、AI時代における資産運用は、もう少なくともデフレではない状況にきているため、やはり今まで以上にインフレヘッジが重要になってくると思われる。

 近年の市場はオーバーシュートの連続である。オーバーシュートとは、本来の価値より売られすぎたり、買われすぎたりしているということである。原因は色々あるが、AIによるアルゴリズム取引もその原因のひとつであることは間違いない。ボラティリティが高くなっているだけに、仕込みのタイミングさえ大きく間違わなければ、利益をあげる可能性は高い環境だと思われる。(第109話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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