エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第107話)

第107話:重要な女性も大黒柱の意識

 国立社会保障・人口問題研究所の「結婚と出産に関する全国調査」によると、殆どの女性が結婚相手の経済力を重視している。しかし、労働市場では、女性の社会進出に伴い、男性の価値が低下する「男性不況」が起きている。雇用形態の変化で、年収300万円以下の低所得の男性が1998年を境に増加傾向になった。年収が低いほど結婚ができない状態になっている。

 最近、雇用状況は改善され、若い世代の就職環境は良くなっている。しかし、もう少し上の世代、ロストジェネレーションと呼ばれる30代半ばから40代前半の就職氷河期世代はまだ厳しい。非正規雇用のまま長いこと過ごすと、よほどのスキルを持っていないと正社員になるのは難しい状況は変わっていない。 一方で、女性の社会進出が結婚におけるミスマッチを増幅させている。一昔前までは女性の所得水準が一般男性よりも低かったため、所得水準の高くない男性ともマッチングしやすかった。

 しかし、男女の賃金格差は縮小し、直近の大卒内定率は女性の方が高い。個別企業の人事担当に聞くと、口をそろえて女性のほうが優秀だと言う。そのこと自体は良いことだが、収入の高い女性が収入の低い男性と結婚したいかというと難しい。高学歴高収入同士で結婚する「同類婚」の傾向が強くなり、低所得の男性をめぐる状況は厳しくなった。

 また、結婚すると子供を産み育てることも考えなければならない。少子高齢化で日本の財政や社会保障がますます厳しくなるのに、自分の収入で果たして将来、自分の子供が幸せになれるのかという不安もでてくる。

 いっそのこと、女性が男性を養う「女性も一家の大黒柱」という意識が広がれば、婚姻率は上がる可能性もある。ただ、これまでの歴史、文化を踏まえると、そのような考え方をする人はまだ少数派である。今後、学校教育や、テレビ、ネット等で、こうした考え方を発信していき、受け入れられるようになればいいのではないか。

 また、婚姻や出産が女性のライフプラン上でマイナスになっている現状を変える必要もある。日本は同じ会社で長く働くほど、収入も待遇も評価されやすい。米国のように職種別の労働市場が構築され、その人の成果に応じた給料が払われ、流動性が高くなれば、新卒一括採用、定年制、年功序列といったものが薄まる。多様な働き方が認められるようになれば、女性が出産・育児でいったん仕事を中断したり、他の会社に転職したりしても、働きやすくなる。

 日本は結婚と出産がつながっているため、非婚は人口減少を招き、社会保障財政が維持できなくなる問題が起きる。フランスのように、子供を多く養育すれば、税制優遇や年金が上乗せされる制度を導入すればいい。高い技術をもった労働者や日本に貢献してくれるような留学生の永住権の取得を緩和する等の移民もある程度容認すべきだろう。欧米では移民の出生率が高いことから、日本でも人口が増え、婚姻率減少の歯止めにもなるだろう。総合的な対策が求められている。(第108話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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投稿者:

ジパング・ジャパン

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