エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第194話)

第194話:消費増税の総合的影響

 内閣府の最新マクロ計量モデルの乗数を使って、前回2014年4月の消費税率3%引き上げの際の個人消費や経済成長率への影響を試算した。すると、2013年度は駆け込み需要により個人消費の押し上げ等を通じて経済成長率が+0.7%引き上げられた一方で、2014年度は個人消費の押し下げなどを通じて経済成長率が▲1.5%押し下げられたことになる。

 一方、今回2019年10月に軽減税率を導入した上で税率を2%引き上げた場合の効果を試算すると、前年は駆け込み需要で個人消費の押し上げ等を通じて経済成長率を+0.4%押し上げるが、引き上げた年は個人消費の押し下げ等を通じて経済成長率を▲0.8%押し下げることになる。ただ、2019年10月の消費増税では、2.4兆円が幼児教育の無償化や社会保障の充実に充当される一方で、昨年度実施したたばこ税や所得税の見直しなどによる財源確保でも家計負担が0.3兆円増えることになっている。これは、家計全体で実質的に2.1兆円の所得減税になるが、ここにポイント還元やプレミアム付き商品券、住まい給付金、次世代住宅ポイント制度など臨時・特別の予算措置のプラス効果が加わっても、1年目の成長率の押し下げは▲0.7%となると試算される。

 なお、ここに防災・減災、国土強靭化等の対策がGDPの押し上げにつながると、今回の消費増税は、前回と比べて経済成長率の押し下げ効果がもう少し小さくなる可能性がある。ただし、2020年東京五輪の特需の反動減や米国経済の減速が生じる時期と重なる可能性があることには要注意だ。五輪特需は建設投資が主だが、1964年開催の東京五輪では経済成長率のピークは前年の1963年10~12月期だった。2020年8月開催の東京五輪にあてはめると、2019年7~9月期になる。また、2018年春から減税の効果が出てきた米国経済も、利上げや貿易摩擦の影響もあり、2019年後半になると減税効果が一巡して成長率の減速は避けられない。このため、いくら手厚い消費増税対策を実施しても、外部環境次第では税率引き上げが景気腰折れの引き金を引く可能性はあるだろう。

 一方、消費税率引き上げの効果は、財政収支の動向と切り離して評価することはできない。そこで、内閣府マクロ計量モデルの乗数を基に、消費税率引き上げに伴う経済動向の変化を通じて事後的に財政収支/国内総生産(GDP)に及ぼす影響を試算した。

 まず、前回2014年4月の3%引き上げを前提に得られた試算結果によれば、財政収支への影響はGDP比で1年目と2年目が+0.9%ポイント、3年目が+0.8%ポイント程度の赤字縮小要因となる。だが、今回2019年10月の引き上げ案では、税率の引き上げ幅が2%にとどまり、軽減税率と幼児境域無償化、社会保障の充実による支援や臨時特別の予算措置が加わる。このため財政収支への影響はGDP比で+0.1%ポイント程度となり、財政赤字の縮小は2014年の1割強程度にとどまる。

 更に、2020年度までの3年間の事業規模が概ね7兆円程度とされる防災・減災、国土強靭化策も財政赤字の拡大要因となるため、その間の消費増税に伴う財政再建効果はほぼ相殺されてしまうだろう。

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第152話)

第152話:「名顔一致」の顧(個)客との会話がマーケティングの原点です。

 時代の価値観を共有することが目的でしょうか。時折TV番組で、繁盛店やヒット商品を生み出した企業の様子を、その店・企業の経営(創業)者との会話を通じて紹介しているものを視聴することがあります。そこでは、形は違えど必ずのように「経営の極意は何か」といった質問が投げかけられます。聞こえてくる答えに共通していることは、「経営に極意はないが、重要なことはお客様との会話にある」という点です。顧客がいてはじめて経営は成り立ちます。顧客なくして店も企業も成り立ちません。このごく当たり前と思えることが基本と指摘される場面を見聞きしています。

 「顧客」を知るというのは、いわばマーケティングの原点でもあります。ところが、その具体的方法を取り上げるとなると、なぜかCRMやデータベース・マーケティング、さらには POSといった、送り手が自らの思いのままに「顧客」を操るがごとき考え方が横行するようです。

 かつて「顧客の囲い込み」とか「顧客組織化」「顧客管理」といった言葉も多く語られました。しかし、お客様は囲い込まれたり、管理されたいと思ったことはない筈です。それよりも、お店での新しい出逢いや感動を得たいと思っている筈。その経験の結果が、長い付き合いの始まりになるのです。

 人と人との関係は、先ずはお互いが知り合うことから始まります。しかもそれは、相手の名前を覚えることから。POSはあくまでも、何がしかのモノやサービスが販売された時点でのデータです。相手の立場に立てば、購買した時点での会話のやり取りこそが、印象に残るものです。

 あなたは、何人のお客様の名前を承知しているでしょうか。個人名を投げかけられるお客様は何人いますか。顧客を知るのは、日常のあなたとお客様との個別的な会話に始まります。まさに、名前と顔が一致すれば、送り手・受け手の関係を超えた人間的な関係もできてきます。

 ソリューション・ビジネスを発信するのであれば、そのまず第一歩は、名前と顔の一致する顧客をどれ程知っているかを自問してみることです。

 マーケティングの思考が変わったのではなく、改めて源流を辿ろうとする機運が高まることを期待する時が今なのです。

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

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清野裕司の「ビジネス心論」

今、マーケティング・スタッフには効率よく作業をこなすためのスキルを高めることよりも、幅広い視野で変化を敏感に捉える感度(センス)が問われています。起きている現象を見る目だけではなく、時にもう一つの目(心眼)を開いて、今迄と今を見直し、明日への道を切り拓いて行くように、自らの心に問う学びの志です。
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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第194話)

第194話:消費増税の総合的影響

 2019年10月の消費増税前後における家計の恒久的な負担増加額を試算すると、消費税率引き上げに対応した新たな対策を考慮すれば、年額2.5兆円と前回2014年4月の3割強の負担となる。

 マクロの家計負担増減額は、1997年4月と2014年4月、2019年10月のそれぞれについて、日銀が消費増税前後の家計のネット負担額を試算している。これによれば、1997年は税率の引き上げ幅は2%で、負担増は年5.2兆円だった。しかし、所得減税打ち切りや医療費自己負担増などの歳入増が重なり、直接的には年8.5兆円の大きな歳入増になったと計算されている。

 しかも、景気対策がない中で1997年6月にアジア通貨危機が起こり、同年11月に山一証券の破綻など金融システム不安が生じて景気は腰折れをしてしまった。そのため、所得減等も考慮した最終的な負担増加額は年8.5兆円を大きく上回った可能性が高い。

 また、前回2014年の3%の引き上げは、それだけで年8.2兆円の負担増となり、給付措置や住宅ローン減税などの負担減を考慮しても、直接的には年8.0兆円の大きな負担増と計算されている。こちらも増税以降に個人消費のトレンドが大きく落ち込んでしまっており、所得の押し下げも含めた最終的な負担増加額は年8.0兆円以上と推察される。

 これに対し、2019年10月の消費増税の負担額は、軽減税率を導入せずに税率が10%に引き上げられると、直接的には家計負担が5.7兆円増えることになる。また、昨年度実施したたばこ税や所得税の見直しなどによる財源確保でも、家計負担が0.3兆円増えることになる。

 しかし、酒類・外食を除く食料を軽減税率の対象品目とした場合、1.1兆円の負担減となる。また、全世代型の社会保障制度の転換に向け、2.4兆円を幼児教育の無償化や社会保障の充実に活用することになっている。ここに、消費税率引き上げに対応した新たな対策として臨時・特別の予算措置が加わるが、恒久的な家計の直接的な負担額は年約2.5兆円にとどまることになる。

 なお、臨時、特別の予算措置となる(1)中小小売業等に関する消費者へのポイント還元の0.3兆円、(2)低所得・子育て世帯向けプレミアム付商品券の0.2兆円、(3)住宅の購入者等への支援の0.2兆円などの対策も加味すれば、短期的な家計の負担増加額はさらに少なくなる。また、家計負担には直接影響しないが、重要インフラの緊急点検等を踏まえた「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」に基づき2020年度までの3年間で集中的に実施するため、その対策が発動されている間の増税効果はかなり少なくなるだろう。(第195話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第193話)

第193話:2019年の海外経済リスク

 トランプ政権の政策運営は2019年もリスクとなろう。減税や保護主義等によりインフレ率が加速すれば、FRBが物価の安定のために利上げを急がざるを得なくなり、中立水準を上回る金利上昇により米国経済が景気後退に陥る可能性もある。そうなれば、日本経済も後退を余儀なくされるだろう。

 更に、新興国経済も重荷となる。特に新興国の民間非金融法人の債務残高/GDPはリーマンショック以降、過去にないほど膨張しているため、米国資金の本国還流などにより、経常赤字の新興国が経済危機や通貨危機に陥るようなことになれば、日本経済への悪影響も無視できないことになろう。

 以上のように、2019年も引き続き海外経済には注意が必要となろう。最大の注目は、米国のねじれ議会の誕生である。トランプ氏の経済政策は、減税やインフラ投資をはじめとした財政政策の計画があったが、ねじれ議会ではこの法案が通りにくくなることが予想される。このため、財政悪化に伴う米国の長期金利上昇リスクは軽減したといえるだろう。

 一方でトランプ氏は2020年の大統領選で再選を目指しているが、財政政策で有権者にアピールしにくくなるため、外交や通商政策でのアピールを強めることが予想される。特に、通商政策は大統領権限を発揮しやすい分野であり、議会の制御が効きにくいという意味では、更なる保護主義化のリスクは小さくない。従って、外交や通商政策において、トランプ氏がどこまで過激な大統領令を発動してくるかも焦点となろう。

 日本経済への影響としては、自動車の追加関税発動等で対米貿易黒字の大幅縮小を余儀なくされれば、経済成長率がかなり押し下げられることになろう。また、中東やロシア等の産油国等に対して更なる経済制裁の強化が実行されれば、原油価格の上昇を通じて日本経済にも悪影響が波及する可能性もある。

 欧州でも、政治の波乱要因が目白押しである。いずれの国でも反EU的な世論の勢いが増しており、欧州政治不安への懸念が燻っている。英国ではブレグジット交渉が内憂外患となっており、ブレグジットを巡って英国保守党内でも意見が対立している。こうした英国の不確実性上昇は円高ポンド安要因となろう。

 ユーロ圏でも、ドイツのメルケル首相の求心力低下や、イタリアの2019年度予算案を巡る財政赤字拡大懸念でイタリア国債利回りが急騰している中、ECB(欧州中央銀行)は量的緩和政策を2018年内で終了することを決定している。

 したがって、こうした欧米政治の不確実性の高まりが、日本企業のセンチメント悪化を通じて、2019年の賃上げ抑制や設備投資先送り等から日本経済の下押し要因になりうることが懸念される。また、今後のトランプ氏の言動や欧州政局次第では、中国をはじめとした新興国経済が大きく悪化するリスクもあることには注意が必要だろう。(第194話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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新年あけましておめでとうございます。

年明け早々に九州では地震となりお見舞い申し上げます。「災」の年はまだまだ続く気配がありますが災害は「絆」で何とか乗り越えてきました。

しかし世界は米中間、日韓間の問題のように大転換の時代に突入し、また景気の問題、人手の問題、お金の問題と世界情勢どころではない身近な問題も積みあがってきそうです。

切っても切れない「絆」によって「災」は乗り越えてきましたが、いろんな価値観がぶつかる大転換期には、相手の全てを自然と受け入れる「絆」を見出すのはもはや難しい話かも知れません。

しかし、こんな時でも part of you の感覚、相手の中に何かの接点を見つけことはできそうです。その接点を結びつけていくと、ひょっとしたら Universality 普遍性につながるのかも知れません。

国内マーケットではさらに絆を強化し、海外マーケットでは  part of you を見出していきたいと思います。

いつもありがとうございます。
どうぞ今年もよろしくお願いいたします。
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