エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第203話)

第203話:昨夏の猛暑により1-3月期の家計消費は平年比で▲1.0%減少

 経済の平均成長率が4%程度あり、なおかつ花粉症患者が少なかった80年代までならこうした要因が個人消費に悪影響をもたらすことは想定しにくかっただろう。しかし、90年代以降になるとバブル崩壊により経済の平均成長率が1~2%程度に低下する一方、花粉症患者も増加しているため、花粉の大量飛散が個人消費に悪影響を及ぼしていると考えられる。つまり、昨年の猛暑により花粉が大量飛散することになれば、日本経済に悪影響が及ぶことは否定できないだろう。

 なお、過去の経験によれば、花粉の飛散量で業績が左右される代表的な業界としては、製薬関連やドラッグストア関連がある。また、カーテンやメガネ関連のほか、ヨーグルト等の乳酸菌食品関連も過去の花粉大量飛散時には売上げが大きく伸びている。

 昨年の猛暑による花粉の大量飛散によって、今年の日本経済にはどの程度の影響が生じるだろうか。総務省の家計調査を用いて、過去のデータから前年7-9月の平均気温と1-3月の個人消費の関係式を作成し試算を行ってみた(注1)。すると、前年7-9月の平均気温が1℃上昇すると、翌1-3月の実質家計消費支出が▲0.9%押し下げられる関係があることがわかる。

 したがって、昨年夏の平均気温が平年より1.0℃上昇したので、今年1-3月の実質家計消費は平年に比べ▲0.9%×1.0℃=▲1.0%(▲5,691億円)程度押し下げられる可能性がある。そして、消費減に伴う輸入の減少なども加味すれば、同時期の実質GDPは同▲0.3%(▲3,464億円)程度減少する計算になる。同様に前年比の影響を見ると、昨年夏の平均気温が前年より+0.4℃上昇したため、今年1-3月期の実質家計消費は前年比で▲0.9%×0.4℃=▲0.3%、実質GDPが同▲0.1%(▲1,175億円)押し下げられる計算になる。

 データ数が十分でなくこの推計結果は幅を持ってみる必要があるが、花粉の大量飛散は身体だけでなく、日本経済にもダメージを与える可能性があるといえよう。また、今春の花粉大量飛散により新規の花粉症患者が増加すれば、悪影響が更に拡大する可能性もある。

 以上を勘案すれば、今後の景気動向次第では、減速感が漂う日本経済に、花粉の大量飛散が思わぬダメージを与える可能性も否定できないだろう。特に足元では、値上げや消費マインド統計の悪化等マイナスの材料が目立っているが、今後の個人消費の動向を見通す上では花粉の大量飛散といったリスク要因が潜んでいることには注意が必要であろう。

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第156話)

第156話:「さくら、さくら♪」と繰り返すのは心に春を感じる証でしょうか。

 今年もまた、桜の開花が早いようです。3月の彼岸の週明けに既に開花とか。桜と言えば4月のイメージが強いのですが、これも地球温暖化の影響でしょうか。今までは、入学式風景の主役の座を占めていたものが、ここ数年は卒業式の風景に登場してきます。セピア色をしたモノクロ写真ですが、自分の小学校・中学校入学時の記念集合写真には、誇らしげな桜が新しい時を告げています。

 咲き始めから満開を経て、散り行く時間の短さに、ある種の空しさと潔さが錯綜するからなのでしょうか、日本人の価値観にマッチしているようで、その間の花見の人の群れは、また異常なほどの混みようです。

 花の美しさを愛でるというよりも、冬の陰鬱な心境からの開放感を味わうことが主題といった感じです。所狭しとマットが敷かれ、宴の始まりです。酒酌み交わす人の顔が、皆にこやかです。「春が来た!」とはしゃぐ集団が、自分たちの陣地を守ろうとします。戦国時代の領地獲得競争そのものの様相です。

 そこでは余り桜の花の話にはなりません。仕事の話、家族の話、友人の話、異性の話・・・、尽きぬ話題が桜を背にして進められます。酒の量も自然と増えようと言うもの。背景の花は、桜でなくてもよさそうな喧騒ですが、やはり「桜」でなければならない。これ程、新しい時の始まりを教えてくれる花も無いように思います。

 それだけ日本人の感性に合っているのでしょうか。桜を感動と共に賛美する歌に、その心が見えてきます。繰り返して呼びかける歌詞を多く聴きます。

 「さくら、さくら・・・」と感極まって抱きしめるような歌詞です。そこでは、「開放」「感謝」「清潔」「決断」「潔白」「瞬発」と、耳ざわりの良い感慨用語が桜を説明しています。

 今年もまた、開花の早い桜。どう声をかければよいのでしょうか。四季躍動の始まりに感謝すべきでしょうか。とすると、やはりまた「さくら、さくら・・・♪」と繰り返して歌いながら、今年の桜を見ることになりそうです。

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第202話)

第202話:昨夏の猛暑の影響で予想される花粉の大量飛散

 昨夏は記録的な猛暑に見舞われた。特に7-9月期の全国平均気温は平年を+1.0℃上回り、2003年以来の高温となった。この影響により、今春は花粉が大量に飛散する可能性が高まっている。㈱ウェザーニュースが2月20日に公表した「第四回花粉飛散傾向」によると、今春の花粉は6年ぶりの大量飛散の恐れとされている。また、スギ花粉の飛散量のピークは3月中旬までとされており、東日本を中心に大量飛散が懸念される。

 花粉の飛散量に関係する統計として、前年夏の平均気温や日照時間がある。昨夏の記録的猛暑の影響で、今春の花粉飛散量が2013年以来の大量飛散になる可能性も指摘されているが、実際に2018年夏の平均気温と日照時間の程度を見ると、2013年以来の高水準だったことがわかる。

 花粉症は日本人の3人に一人が患者とも言われ、今や「国民病」と呼べる存在であり、花粉の大量飛散が現実のものとなれば、経済全般にも影響を及ぼすことが想定される。

 そこで本稿では、花粉が大量飛散した場合、日本経済にどれほどの影響を及ぼすのかについて分析してみたい。

 花粉の大量飛散は、主に以下の経路を通じて日本経済に影響を及ぼすことが想定される。まず、花粉が大量に飛散すれば、花粉症患者を中心に外出が控えられ、個人消費に悪影響を及ぼすことである。具体的にはレジャーや小売、外食関連等の売れ行きが不調になると見られる。

 実際、前年夏の気温と1-3月期の家計消費支出には関係がある。1-3月期の家計消費(前年比)と前年7-9月期の気温(前年差)の関係を時系列で見ると、夏場の気温が前年を上回った翌春の消費は概ね減少する関係があり、前年の猛暑は翌春の個人消費にとってマイナスであることが示唆される。

 そして、1-3月期の家計消費水準指数の伸び率と前年7-9月期の平均気温(全国平均の前年差)の相関を品目毎に見てみると、2000年代以降では外食を含む「食料」、レジャー関連を含む「教養娯楽」、外出頻度が増えれば支出されやすくなる「被服及び履物」、等の支出で前年夏の平均気温と強い負の相関関係が現れている。一方、外出頻度が下がれば支出が増えやすくなる「光熱・水道」や、薬やマスク・医療費等を含む「保健医療」や空気清浄機などを含む「家具・家事用品」等の支出で正の相関関係が合われている。

 また、店舗形態別の売上との関係を見てみると、「百貨店」では花粉の大量飛散による負の相関が観測される一方で、「スーパー」で正の相関が観測される。この背景としては、花粉症になると百貨店に遠出して買い物する頻度が少なくなる一方で、近所のスーパー等での買い物の頻度が高くなるためと推測される。(第203話に続きます)

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
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永濱利廣

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第201話)

第201話:シャワーヘッド版新規事業展開の成功事例

 国内人口の減少や少子高齢化による国内需要の変容、さらにはグローバル化による国際競争の激化など、中小企業を取り巻く市場環境の変化は激しくなっている。そうなると、既存の製品やサービスに対する需要は時間とともに変化し、中には市場から淘汰される製品やサービスも存在する。

 こうした中、中小企業庁の「中小企業白書」でも、中小企業が継続して成長していくためには既存の事業にこだわらず、時代の変化に対応し、積極的に市場の開拓や新たな事業の展開に取り組んでいくことが重要であるとしている。一昨年秋の民放連続ドラマでも、老舗の足袋製造業者がランニングシューズの開発に挑戦する奮闘が描かれ話題となった。これは、新事業展開の成功事例といえるが、あくまでフィクションである。

 こうした中、中小企業白書では、外部リソースを活用したブランド戦略でニッチ市場を創出した新規事業展開の成功事例が紹介されている。この会社は岐阜県山県市にあり、伸銅やステンレス部品、シャワーヘッドの開発や製造をして販売する業者である。

 この企業は元来、下請けメーカーとして水栓バルブの部品を製造してきた。しかし、住宅着工の低迷による需要の停滞や価格競争の激化を受け、下請け取引に頼らない自社製品の開発と販路開拓を目指した。

 そして、新たな事業の柱を検討していたところ、関連する業界で節水効果を備えたシャワーヘッドが高価格帯で販売されていることに着目して新製品開発を進めたことにより、節水効果のみならずそこに美容作用という付加価値を兼ね備えたシャワーヘッドの開発に成功した。

 更にこの企業が優れていたのは、こうした消費者向けの新製品を売り出すにあたり、ブランディング戦略をアウトソーシングしたことである。アウトソーシングすることにより、中小企業が独自には取り組みにくい新商品のコンセプトやPRポイントを明確にし、顧客からの知名度を高めることに成功した。

 美容や健康志向に感度が高いとされる30歳代の女性をターゲットとし、自社ブランド製品の確立には3年近くかかったものの、結果的に売上高は2倍程度まで増加したとのことである。

 このように中小企業白書では、新事業展開に成功する企業はマーケティングに注力していると指摘している。そして、マーケティング活動の評価や検証まで実施する企業は、利益率の上昇や従業員の意欲向上といった効果を得ているとしている。

 また、新事業展開の課題として人材不足が挙げられているが、経営資源に限りがある中においては、今回の事例でもブランディング戦略をアウトソーシングしているように、今後の成長や新事業展開に向けて外部リソースの活用も視野に入れながら、新事業展開を積極的に実施していくことも重要となろう。(第202話に続きます)

永濱 利廣 氏

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第155話)

第155話:時を知るのは、一人ひとりが持つ「気時計」だと思います。

 年に数回、企業のマーケティング・スタッフと時を共有し、あるテーマをディスカッションしながら未来を描くワークショップを実施します。その時間のほとんどは、一日フルタイムです。かといって休憩無しのマラソンレースではなく、途中途中に小休止を入れ、頭の回転が鈍らないように考慮します。ある時はお茶を飲みながら、ある時は菓子を口に運びながら、その日のテーマから思考の回路が外れないように心しています。

 一旦休憩して、定刻に再度エンジンを噴かそうとすると、大体一人か二人が揃いません。2~3分ほど遅れての入場です。場合によってはそれ以上の遅刻もあります。さも何事もなかったように着席して、周りを見回します。すでに議論が少し前に進んでいるケースがほとんどです。ただ、そのような場合にも、当の本人は何も気にしていません。かえって、こちらの方が何か悪いことでもしたような気になります。当人にしてみれば、何も目くじら立てることではなく、少し遅れたくらいでとやかく言う必要もない、との思いがあるのでしょう。
 
 同じような体験は、研修の場合にもよく遭遇します。人が他人の話を集中して聞くことの出来る時間は90分がひとつの目安と言われます。それに沿ってやはり、90分弱で休憩を取るように心掛けます。再開の時間になっても、まず全員が揃うことはありません。数名がやはり、少し遅れてあたふたと入場します。特段目ざわりということはありませんが、なぜ時間通りに行動できないのかを不思議に思う時です。

 生活の中でも、目に見えることはなくとも気にしておかなければならない筆頭格に「時間」があると思います。「気に」しなくなれば、何事もないのですが、それでは全体の統制や調和が図れません。目に見えぬからこそ、大切にしなければならないのです。どこかに移動する際に、定刻を過ぎれば新幹線も飛行機も出発してしまいます。少しくらい遅れても・・・の道理は通じないでしょう。

 時の流れを気にしない人は、気持ちの中に明快な時計を持っていないのでしょうか。一人ひとりの「気時計」です。「気づき」も少なく、他人への「気働き」も無いのでしょうか。そのクセに「気位」だけは高いのかもしれません。やっかいなことです。(第156話に続きます)

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清野裕司の「ビジネス心論」


今、マーケティング・スタッフには効率よく作業をこなすためのスキルを高めることよりも、幅広い視野で変化を敏感に捉える感度(センス)が問われています。起きている現象を見る目だけではなく、時にもう一つの目(心眼)を開いて、今迄と今を見直し、明日への道を切り拓いて行くように、自らの心に問う学びの志です。
学ぶこと考えることの楽しさを知った自らのビジネス体験を、次代へと歩み行く方々に伝承しておきたいと考えて「心論」と題しました。

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