清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第174話)

第174話:伝えることは自らの意志の発信です。わかりやすく。

 自分自身が言葉を使って、さまざまな「論理」を組み立てる仕事をしているからでしょうか。口をついて表現される一言一句にこだわりを持って発信しています。時にその「こだわり」が、表現上「かたくな」な印象を与えてしまうこともあると思っています。自分の肉体の一部から発せられた表現は、内容を含めて発信者自身の責任に帰するものという覚悟をもって、話したり書いたりしているのが日常です。

 そのような認識でいるからだろうと思います。時にTVで見、新聞で読み、SNSを介して垣間見る政治家(先生)諸氏の発する言葉の軽さには、目を覆い、耳を塞ぎたくなってしまうことがあります。人の質問に対して、質問内容から外れた答えをしながらも、延々と自説を語る方。そこに本来的な問題を解決しようとする姿勢が見えてきません。誰に対して発信しているのかも不鮮明な印象があります。聞いて貰うべき人が存在しない独り言に聞こえてしまいます。

 また、慣用句のように聞こえてくるのが、「丁寧な・・・説明/対応をしたい」という「丁寧」ということ。「しっかりと対応する」という「しっかり」の裏付け。「説明責任がある」「任命責任がある」という「責任」の取り方。

 口をついて出る言葉は、本来、自分の想いが表出されたもののはず。だからこそ、言葉を言霊(ことだま)と言いました。言ったことに対する責任をとろうとせずにいる姿勢では、人はいつかその発信者を「オオカミ少年」のように信じなくなってしまうでしょう。言葉は責任の所在を明示していることにも繋がるのです。

 マーケティングの分野でも、時に言葉をもてあそぶような場面に遭遇することがあります。ちょっとした違いにしか過ぎないものを、さも大きな差があるようにメッセージを流す広告も見られます。本来、自らの顧客に向かって発信すべきは、木の葉のような川に浮かび流れる軽さではなく、自らの想いを表明した「言葉」であり、提供者自身の心の端にある「想い」であるはずです。政治の世界に身を置かれる先生方の言葉には、どれほどの重みがあるでしょうか。

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 2016年11月の九州生産性本部での授業風景
株式会社マップス 
代表取締役 清野 裕司

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清野裕司の「ビジネス心論」


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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第240話)

第240話:経済活動を停滞させる暖冬

 今年度も昨年度に引き続き、今のところ暖冬となっている。気象庁が11月25日に公表した12月から2月までの3か月予報でも、1月にかけて気温は全国的に平年並みか高いと予想している。

 近年では、2015年に記録的な暖冬となり、北海道を除く北日本で平年より10日-14日以上遅い初雪・初冠雪、沖縄では12月に長期的な高温を観測した。また12月は日本国内のみならず、国外の多くで北半球最大規模の大暖冬となった。

 気象庁の発表によると、2015年10-12月期の全国平均の気温は前年より+1.2℃程度高くなった。この暖冬の影響で同時期の消費支出(家計調査)は前年比▲3.2%の減少に転じた。特に、被服履物が冬物衣料の売り上げが不調となったことから、同▲11.5%の落ち込みを記録した。また、交通関連を見ても、暖冬の影響は明確に表れた。同時期の交通・通信支出は暖冬の影響で冬のレジャーやタクシー利用が落ち込み、車関連でもスタッドレスタイヤ等の冬物商材が落ち込んだことで売り上げが低迷した。保険医療の支出動向も製薬関連が落ち込み、全体として低調に推移した。

 国民経済計算ベースで見ても、暖冬の影響が及んだ。2015年10-12月期の実質国内家計最終消費支出は前年比+0.3%と伸びが急速に鈍化し、家計調査同様に被服履物の支出額が大幅に減少した。また、冬のレジャーの低迷により娯楽・レジャー関連でも暖冬がブレーキとなった。

 以上より、今年の冬も暖冬が続けば、各業界に影響が及ぶ可能性がある。過去の経験によれば、暖冬で業績が左右される代表的な業界としては冬物衣料関連や百貨店関連がある。また、電力・ガス等のエネルギー関連のほか、製薬会社やドラッグストア等も過去の暖冬では業績が大きく左右されている。自動車や除雪関連といった業界も、暖冬の年には業績が不調になりがちとなる。鍋等、冬に好まれる食料品を提供する業界やスーパー、食品容器等の売り上げも減少しやすい。冬物販売を多く扱うホームセンターや暖房器具関連、冬のレジャー関連などへの悪影響も目立つ。

 一方、屋外娯楽関連サービスや鉄道、外食に加え、コールド系の飲食料品の販売比率が高いコンビニなどには恩恵が及ぶ可能性がある。

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
永濱利廣

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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第173話)

第173話:変化を「みる」マーケティング眼を磨く。

 「現在の市場環境をつぶさにみて、今後の戦略を考えよう」。といった声は、マーケティングの分野で日常的によく発せられる言葉です。ここで言う「みる」とはどのような意味を持っているのでしょうか。漢字で表記すればさまざまあります。「見る/観る/視る/診る/看る」・・・、それぞれに意味を持っています。市場の様子を“みる”のは、これらの複合的な意味になるでしょう。

 先ずは、「見る」ことから始まります。現実に起きている事実を、自分の目で確かめること。単に他人の書いた報告書を読むことで、何となくわかったつもりになるのではなく、実際に起きていることを確認する行為でもあります。

 続いて必要なスタイルは「観る」こと。観劇・観賞という言葉もあるように、対象を明確にして、楽しみながらみることです。問題意識を持って、不思議を発見する姿勢でもあります。更に自らの問題意識を深めるためには「視る」ことが必要になります。細かなチェックリストをもって見直すことです。何を調べるべきか、どこで確認するのかといった視点を鮮明に持っておかないと、時折国会議員の行動が槍玉に上がる物見遊山の視察になってしまいます。

 更にマーケティング・スタッフには「診る」姿勢が必要です。診察の言葉があるように、課題解決の方策を考えながら、現状を再度確認する行為です。そして、実行した後の成果を「看る」ことが続きます。状況の変化がどのような様子であったかを、自分の目で確かめることです。

 マーケティング・スタッフとして、何を見るか、何を感じるか。変化の波は、誰に対しても押し寄せてきています。問題は、その変化をどのような見方で「みて」いるかの姿勢が問われるのです。

 新しい「子の年」も、自らの目と心眼をもって、時代の変化を「みつづけて」いたいと思います。(第174話に続きます)

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エコノミスト永濱利廣の経済コラム (第239話)

第239話:2020年のマーケット展望

 2020年のマーケットを展望するうえで最大の注目は、トランプ大統領と民主党候補者の経済政策である。トランプ大統領の経済政策の特徴を勘案すれば、更なる拡張的な財政政策への期待と保護主義的な通商政策の懸念が残る。

 一方、民主党候補者の一人であるバイデン前副大統領はトランプ政権の保護主義を批判しており、通商面で不透明感が少ないと見られている。また、企業に対する規制に対しても前向きでない点が、金融市場にとってポジティブだろう。しかし、同じ民主党候補者のウォーレン上院議員は、反自由貿易主義で企業や高所得者への増税、企業への規制強化を打ち出しているため、民主党候補者が誰になるのかも金融市場の大きな焦点となろう。

 日本経済への影響としては、ウォーレン上院議員が勝ち上がり、米国経済が大きく落ち込むことになれば、日本の経済成長率もかなり押し下げられることになるだろう。また、トランプ大統領が再選を果たしたとしても、トランプ政権の政策運営もリスクだろう。というのも、次の再選はないため、経済そっちのけで米中通商摩擦が激化することになれば、米国経済が景気後退に陥り、円高・株安を通じて日本経済にも悪影響が波及する可能性がある。

 2019年のマーケットは、夏ごろまで長期金利が低下トレンドにあったことに加えて、不安定な株式市場でリスクを取りにくい状況にあった。

 こうした中、FRBが2019年7~10月のFOMCで、立て続けに利下げに踏み切るとともに、ECBも9月に緩和にかじを切ったことも、株式・債券市場にポジティブに作用した。しかし、すでにFRBは10月に利下げを打ち止め、様子見の姿勢に転じている。このため、米中貿易協議の進展次第では、世界の株価や長期金利が更なる上昇を試す可能性もある。

 2020年の相場環境については、トランプ大統領が再選を目指すべく、経済重視に政策がシフトすることが予想される。また、日本でも東京五輪特需が期待されることに加えて、中国が2010年比でGDPを倍増する目標期限年でもある。このため、リスクオン気味に推移するとの見方が強まれば、世界の株式市場の押し上げ圧力となる可能性がある。

 ただし、年後半以降はこれらの重要インベント効果が剥落することが意識されるだろう。特に米国では、大統領次第で米中の覇権争いが再び激化することが懸念され、任期満了に近づく安倍首相が経済政策後回しで憲法改正に邁進するリスクも警戒される。年後半はリスクオフに伴う株価の下落が金利低下・円高を後押しする展開になるかもしれない。

 なお、リスクは金融市場のバブルである。特に米国経済は景気後退の前に必ず見られる逆イールド(長期金利が短期金利を上回る)の状況にあったため、予防措置的な利下げに動いた。しかし、98年のLTCMショック(米国大手ヘッジファンドLTCMの実質破綻)後の逆イールド発生時の様にFRBが利下げをしすぎるようなことになれば、99年以降のITバブルのように、今回も短期的に金融市場でバブルが発生しその後崩壊する可能性もあり、その場合には日本経済への悪影響も無視できないことになろう。

永濱 利廣 氏

第一生命経済研究所
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清野裕司のマーケティング・コラム/風を聴く (第172話)

第172話:マーケティング思考の基本は「対」を考えること。

 マーケティングを企業行動に取り込もうと考えている経営者もスタッフも、改めて振り返ってみて欲しいことがあります。共に企業で日々汗をかいていても、いざ仕事を離れれば、皆、消費者であり家庭人です。企業行動のガイドとしてのみマーケティングを捉えてしまうと、人間不在になってしまいます。

 「送り手」である企業の思考は見えてくるのに、「受け手」である顧客の思考が欠落してしまう恐れがあります。マーケティングは、「送り手」と「受け手」の良好な関係を生み出すことを主題にして、ビジネスを考える思考のガイドなのです。であるならば、「送り手」思考を持っただけでは、一方通行になってしまうことになります。自分自身が「受け手」の思考をもって、はじめて両者の関係の中に自分を置くことが出来るのです。つまり、何事においても相手があって初めて「交換」が成り立つと考えれば、マーケティングの基本思考は常に「対」で考えることが必要であることを教えているのです。

 ある現象を知るためには、全体を見るために細かく分けて考える「分析」する力が問われます。Analysisの力です。でも、細かく分けて詳細が分かっても全体が見えなければ新たな姿は見えてきません。「総合・統合」Synthesisが必要です。

 「売る」ことができるのは「買う」人がいるから。「つくる」人は「つかう」人のためにつくっていることになります。

 では「ありがとう」の対は何でしょうか。ありがたいを漢字で書くと、「有ること難し」です。あることがほとんどないから「有難し」です。これを反対から見てみると、あることが「あたりまえ」ということになりますから「当然」が対ということになります。お店とお客様との関係でいえば、「ありがとう」を発信するのは「めったに出会うことのない商品を買うことができた、ありがたい」で「ありがとう」とお客様が言う。それに対して「私どもでは、いつもお客様が新しい出会いを感じて頂けるように心がけております」。口には出さねど「当然のことをしたまでのこと」という対の関係が出来てきます。

 お客様からどれほどの「ありがとう」を頂けるかが、マーケティングの基本行動になると考えられるのです。

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